夜と最後の夏休み

 その日、僕は朝の手伝いを終えて宿題をまとめていた。

 ワーク類は終わった。読書感想文もなんとか書いたし、工作も父さんに手伝ってもらって簡易プラネタリウムを作った。暗い部屋で灯すと即席プラネタリウムになるのだ。

 造りは簡単だけど、よく知らない人にも星座を見つけてもらえるように結構こだわったから、なかなよくできたと思う。

 そして自由研究だ。大きな模造紙にカレンダーを書いて、毎日の家事や食事の内容を書いている。


「んー……感想とか、書いてみる?」


 全然できなかったとか、そういうの。ちょっとずつ、できるようになってきたようなことを……できてないけど。


「なにが難しかったとか書くのはイイ気がする」


 それをどこに書こうか。あんまりみっちり書き込むと見づらいよなあ。

 なんて悩んでいると母さんが呼びにきた。


「夜、お客さん。田崎ほのかちゃん。上げていい?」

「ダメ。すぐ行く」


 今忙しいんだけど、それを言うと田崎さんは喜んで僕の部屋にやってくるだろう。それは嫌だ。

 重たい息を吐いて立ち上がった。




「ごめんね、呼び出しちゃって」


 海に近い公園までやってきて、やっと田崎さんは振り返った。いつかと同じようにスカートの裾が揺れて、僕は美海のことを考える。

 たぶんそれは現実逃避だ。僕は面倒くさがりのナマケモノだから、誰かのことを考えるのが面倒くさい。面倒くさくない、美海と詩音に逃避している。失礼な話だ。


「いいよ。話ってなに」


 できるだけまっすぐに田崎さんを見る。逃げないように。美海にかっこ悪い僕でいたくないから。こんなときだって美海を理由にするかっこ悪い僕だけど。それでも背筋だけは伸ばす。


「佐々木夜くん。好きです。つきあってください」

「ごめんなさい」


 頭を下げる。僕に必要なのは美海だけだから。他の誰かはいらない。


「そっか。そうだよね」


 思ったよりあっさりと田崎さんは言った。


「佐々木くんがわたしに興味ないのはわかりきってたし。それでも言っておきたかったんだ。最後までワガママに付き合わせちゃったね。ごめん。ありがとう」

「ううん」


 ゆっくりと首を振る。


「田崎さんがどうってわけじゃないよ。僕が今、誰かと付き合う気がないってだけ」

「それは……ううん。やめとく。ちゃんと言ってくれてありがと。また二学期にね」


 田崎さんはスカートを翻して公園を出て行った。

 僕もちょっとしてから公園を出る。追いつかないように、できるだけゆっくりと家に向かった。


 途中で美海の家の前を通ったけど、立ち止まらずに自分の家に向かった。自由研究の続きをしたいし、今美海に会っちゃうと、きっと僕は甘えてしまう。

 せめて、自分のことを自分でやってからだ。