夜と最後の夏休み

 夜は短しって言うけど、本当に短い。僕は焦るような気持ちで天体望遠鏡を覗いていた。


 夏休みの自由研究として選んだ『自分のことは自分でやる』は、正直あんまり調子が良くない。夏も終わりなのに、なに言ってんだって感じなんだけど、全然思った通りに進まなかった。

 家事なんて誰でもやってる、当たり前の事じゃんって思ってた。母さんの手際がいいのは馴れてるからだ。僕だって毎日やっていれば、それなりにイイ感じにできるようになると思っていたんだ。


 けど、現実は全然ダメ。

 洗濯物はいまだに僕がたたんだ分はくちゃっとしている。僕が干した父さんのシャツはしわっしわで、母さんに洗い直された。

 掃除が一番マシだろうか。でも掃除機のかけ残しや、洗面所の拭き忘れをよく指摘される。今朝も言われた。


 料理も壊滅的だった。一週間に一度料理をする。たったそれだけのことなのに!

 まず予算にあわせてメニューを決めるのが難しい。だって野菜の値段が毎日違う。夏のはじめと終わりで全然変わっちゃてて、どうしていいかわからない。

 火加減もさっぱりだ。調味料の計測だってもたもたしてしまう。最初の頃、あんまりにもうまくできなくて、母さんが料理しているところを横で見ていた事もあった。


「……今、なにが?」

「味噌を出汁に溶いて、フライパンを振って蓋をしてタイマーをセットして、ご飯が炊けたから軽くほぐして、それから次に使う調味料を混ぜたところ」

「なんて?」


 呪文かなにか? 母さんの手元では何種類もの料理が平行して作られていた。そして父さんが帰ってくると同時に、すべてが食卓に並んでいく。


「母さん、魔法使いだった?」


 こっそり父さんに聞いたら爆笑された。