「そんなすごい人が……私の事件を解決してくださるの?」
「ちがうちがう。捜査はできない。でも証拠集めや対策のサポートはできる」
「それはとても心強いです。正直、こんなことが身にかかるなんて今でも信じられなくて心細くなっていたから、ありがたいです」
「そう、そこだよ! だから、湊と一緒に暮らせと言ってんだ」
「どうしてそうなるのっ」

突拍子もない言葉に思わずつっこんだ。
いくらお兄ちゃんの親友で、サポートしてくださるとは言え、今までなんの交流もなかった人と同居するなんてありえない。しかもよりによって湊さんとだなんて……。
それに、湊さんだって生活がある。迷惑をかけるに決まっている。

「小学生のころ、ちょっとは話しただろ。幼なじみみたいなもんなんだから、遠慮することない」
「ちょっとって、ほんとに少ししか……」
「まぁ、話を聞けって」

兄が手をあげて制す。

「千紗は深夜に仕事に行くこともあるだろ? 湊は朝早く出て、夜遅く帰ってくる生活をしている。すれ違うことが多いから、互いの生活に影響を及ぼすことは少ない」
「で、でも、そこまで多忙なら、余計にご迷惑を掛けるわけには……」
「言っていいかな?」

それまで私と兄のやり取りを見守っていた湊さんが、静かな口調で入ってきた。

「正直、他の人間を気に掛けている場合ではないと思うんだ」

一瞬でその場の空気が変わるような、低く落ち着いた声だった。