無口な警察官様とのまさかの同居生活についてご報告します〜過保護で甘々で困っているのですが…!〜

聞き耳を立てるなんて、いけないことだ。
そう思うのに、いつもと違う、感情を抑えたような声が気になって、息を潜めてしまった。

「何度も言いますが、丸山長官の娘さんとのお見合いは受けません」

お見合い。

胸が、きゅっと縮んだ。

やっぱり、そういう話はあるよね。
エリートで、将来も有望で……湊さんなら、当然のことなのかもしれない。

電話の相手は、きっと上司なのだろう。
出世にも関わる大事な話だから、こんな時間でも連絡が来るのかもしれない。

でも、電話越しでもわかるほど、彼ははっきりと嫌がっているようだった。
たたき上げで、自分の力で道を切り拓きたい人にとって、どんなに“いい縁談”でも、ありがた迷惑なのだろう。

だからこそ、彼のそばにはふさわしい人がいるべきなんじゃ……。

胸の奥が、ちくりと痛んだ。

私みたいな、なんの取り柄もなくて守られるしかない存在は、彼のお荷物になるだけなんだろうな。

湊さんの低く、落ち着いた声が続く。

「……今は、そういうことを考える余裕がない状況でして――ええ。大切な友人のトラブルに協力している最中で……。――いえ、そういう意味ではありませんが」

どうしてもという気持ちがあるのか、電話の相手も食い下がっている。
はっきりと自分の意志を伝える湊さんも、困っているようだった。

もやもやとした気持ちを胸に抱えたまま、私はそっと自分の部屋に戻った。