「……ま、湊のことだから、そんなことだろうと思ったけどな」
と兄はぶつぶつと独り言みたいに言ってから、ドヤ顔を浮かべて続けた。
「あいつを頼って正解だったろ? あいつは“超”がつくほど真面目で、そのうえ輪をかけていいやつなんだから。ま、おまえは昔のトラウマで無駄に怖がってるけど」
「うん。その点は……すぐに打ち解けたよ」
私は、先日和解したやり取りをかいつまんで話した。
猫のマグカップをもらったことも伝えると、兄は噴き出した。
「あいつが猫ちゃんのマグカップ……!」
「もう、笑わないでよ。湊さんが私のために気遣ってくれたんだから」
「あいつもいろいろ考えたんだな。健気なやつだ……!」
そう言いながら、涙が出るほど笑っている。失礼すぎる。
「……でも、おまえと湊の距離が縮まってよかった。あいつは本当にいいやつだからなぁ。……高校の頃、通学中に木の枝から毛虫が俺の肩に落ちてきたことがあったんだけど」
兄は懐かしむようにつづけた。
「俺はもう大騒ぎ。けどあいつは毛虫を助けて、近くの高い枝に戻したんだ。パニックの俺をそっちのけでさ。まさに“虫をも殺さぬ男”だろ」
湊さんが聞いていたら、「いつの話をしてるんだ」と言いそうだ。
でも彼なら大いにあり得る気がして、思わず、ふふっと笑ってしまった。
と兄はぶつぶつと独り言みたいに言ってから、ドヤ顔を浮かべて続けた。
「あいつを頼って正解だったろ? あいつは“超”がつくほど真面目で、そのうえ輪をかけていいやつなんだから。ま、おまえは昔のトラウマで無駄に怖がってるけど」
「うん。その点は……すぐに打ち解けたよ」
私は、先日和解したやり取りをかいつまんで話した。
猫のマグカップをもらったことも伝えると、兄は噴き出した。
「あいつが猫ちゃんのマグカップ……!」
「もう、笑わないでよ。湊さんが私のために気遣ってくれたんだから」
「あいつもいろいろ考えたんだな。健気なやつだ……!」
そう言いながら、涙が出るほど笑っている。失礼すぎる。
「……でも、おまえと湊の距離が縮まってよかった。あいつは本当にいいやつだからなぁ。……高校の頃、通学中に木の枝から毛虫が俺の肩に落ちてきたことがあったんだけど」
兄は懐かしむようにつづけた。
「俺はもう大騒ぎ。けどあいつは毛虫を助けて、近くの高い枝に戻したんだ。パニックの俺をそっちのけでさ。まさに“虫をも殺さぬ男”だろ」
湊さんが聞いていたら、「いつの話をしてるんだ」と言いそうだ。
でも彼なら大いにあり得る気がして、思わず、ふふっと笑ってしまった。



