兄の言葉に続けて美湖さんも優しい口調で言った。
痛いほど真剣な三人の視線にさらされて、胸がぎゅっと締めつけられた。

今までは、自分だけに降りかかった災難のように考えていた。
けれども、確かに事はもっと深刻なのかもしれない。誰かを巻き込んでしまう可能性もある。
夜間勤務明けは、お迎えに来た保護者と子どもとで一緒に帰ることもあった。
私に付きまとっていた犯人がその時急に襲い掛かってきたら……。
親子が巻き込まれるようなことが起きたら……。

背筋が震えた。

覚悟を決めなくては……。

私は深く息を吸い、真正面から湊さんを見つめた。

「……どうぞ、よろしくお願いいたします」

ほっとするような空気が部屋に広がった。
湊さんも安堵するように微笑むと、頼もしげにうんと深くうなずいた。

不安でいっぱいの同居生活は、こうして幕を開けた。