「ひさしぶり。俺のこと、覚えてる?」

ぞくりとした。低い声だった。

見上げるほどに背の高い男の人が私を見下ろしていた。

目は大きいけれど、きりっとした切れ長。
鼻梁は高くて、唇も形がいい。
柔らかくパーマがかかった短髪を立てた爽やかなヘアスタイルが抜群に似合っている。
短い前髪からのぞく額と意志の強さをあらわす太めの眉が、男らしさを強調していた。

こんなかっこいい男の人を忘れるはずない。

今の彼は、記憶の中の容姿に大人の風格が加わっていた。
体はがっしりしてよりいっそう大きくなっているし、落ち着いて穏やかな雰囲気も以前の彼にはなかったものだ。

完璧な男性を前にして、小学生の頃のように私は緊張した。
でももう二十五歳のいい大人。
震えそうになるのを抑えて、ほほえみ返す。

「もちろん覚えています。おひさしぶりです、湊さん」

名前を口にすると、彼は嬉しそうに表情をやわらげた。

……わらった……。