愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「政略結婚?」

 令和の時代でもあるものなのだろうか。
 一般家庭で育った私にしてみれば、まったく無縁の単語だし、ラノベでしか見たことがないものだ。

 優雅にティーカップを持ち上げる麗華さんを見れば、確かに、今の時代でもお嬢様がいるのだと納得はできるけど。

 麗華さんがカップに口をつけたタイミングで、私と結城くんが頼んだコーヒーが届いた。
 立ち上がる珈琲の芳ばしい香りが揺れ、冷えた指先で触れたカップから熱がじんわりと伝わってくる。

 ティーカップが静かに受け皿へと戻した麗華さんが、おもむろに口を開いた。

「咲良さんに、婚約を解消するお手伝いをしてほしいの」

 再び言葉の意味が理解できず、硬直することしかできなかった。

「あ、あの……なにがなんだか」
「湊さんから聞いたわ。咲良さん、一織さんのことが好きなんでしょ?」
「それは……」
「誤解しないで。私たちは、貴女の恋を応援したいの」

 真剣な顔で、とんでもないことをいいだした麗華さんは、東條さんとの婚約は夏に持ち出されたものだと説明してくれた。