少しだけ寂しく思っていた時だった。
「坂下さん、今日ってなにか予定ある?」
名前を呼ばれて振り返ると、結城くんが立っていた。いつもに増して緊張したような、真剣な顔をしている。
「夜は塾講のバイトが入ってるけど、なんで?」
「もし少し時間が取れるなら、付き合ってほしいんだ」
「付き合うって?」
「……会わせたい人がいる」
にこりとも笑わない顔に、少しだけ不安を感じた。
会わせたいって、どういうことだろう。一緒にカラオケに行こうとか、そういう雰囲気ではなさそうだけど。
「駅そばのカフェで待たせてるんだ」
「えっと……なんの話かな。変な勧誘とか宗教はお断りだよ」
「ああ、ごめん。そういううんじゃないよ! その、会わせたいのは……」
慌てた結城くんは忙しく視線を動かすと、ガリガリと髪をかき乱した。
「俺の彼女なんだけど」
「彼女?」
意外な返答に首を傾げると、言葉を濁した結城くんは周囲をきょろきょろと見まわした。もしかして、陽菜ちゃんたちを警戒しているのかな。そうなると、二人には知られたくない話ってことか。


