東條さんにお弁当を作るようになって、三週間目。

 講義が一通り終わって帰り支度をしながら、ふと外を見た。
 今にも雨が降りそうなどんよりとした雲が広がっている。来週にはクリスマスが控えているけど、さすがに雪は降らないよね。実家では降るかもしれないけど。

「冬休みどうしようかな……」

 塾講師として受け持っているクラスは受験生でもないし、実家は栃木だから帰ろうと思えば帰ることもできる。昨年の年末もお母さんと一緒にお鍋をつついて、年越し蕎麦を食べて……お酒に弱いお母さんが酔っぱらって「いつか恋人連れてきなさいよ」と笑った顔をふと思い出した。
 
 私が帰らないと、一人でお酒を飲むのかな。もしかしたら、親戚の家に行くのかもしれない。

 帰りたい。でも、東條さんにお弁当を届けたい。
 体が一つなのを恨めしく思いながら、ため息をついた。

 よく考えてみたら、年末年始まで毎日会うのは無理かな。東條さんにだって付き合いがあるもんね。忘年会とか新年会とか。それに、お母さんは亡くなっていても、ご家族だっているだろうし。

 お弁当も、お正月休みをもらう感じになるのかな。