愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「山茶花ブレンドになります」
 
 白地に青い花柄がお洒落なコーヒーカップがカウンターに置かれる。
 ほんのりとナッツのような優しく甘い香りに、東條さんの顔がほころんだ。カップに口をつけ、ほっと一息ついた後に「午後も頑張れそうだ」と呟くのを聞き、私は心の中で「私も頑張ります」と頷いていた。

 ◇

 あくる日、大学の講義も終わり、急いでバイト先へ向かおうと校内を足早に歩いている時だった。

「あれ、咲良ちゃん?」

 聞き覚えのある声に振り返ると、東條さんがいた。

 ただただ驚いて言葉を失っていると、彼は一緒にいた教授になにか早口で話し、笑いながら揃って近づいてくる。よく見れば、一緒にいるのは経営戦略論を専門としている野崎教授だった。

 慌てて教授に頭を下げると、東條さんが「偶然だね」なんて軽く話しかけてくる。

「咲良ちゃん、講義はもう終わったの?」 
「終わりましたが……どうして東條さんがうちにいるんですか?」
「野崎教授に呼び出されてさ」

 まったく話が見えずにきょとんとしていると、野崎教授は「来年からゼミに入る坂下だな」と、したり顔で話しかけてきた。