愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「特別か……だから、さざんかに行きたくなるのかもな」
「そんなコーヒーを淹れられたら素敵ですよね。だから練習してるけど……」

 なかなか上達しないのだと言葉を濁した咲良ちゃんは、すんっと小さく鼻を鳴らして「いい香りがしてきましたね」と笑った。

「さざんかの店長ほど上手ではないが、コーヒーメーカーが淹れるのも、なかなか美味しいよ」

 ポットを傾け、二つのカップに優しい香りをくゆらせるコーヒーを注ぎ入れる。

「砂糖とミルクはいる?」
「なくて大丈夫です」

 カップ両手に持ってゆき、片方を咲良ちゃんに差し出しながら、その横に腰を下ろした。

 いつもは一人で座っているソファーが、やたら狭く感じる。だけど、それは決して心地悪いわけではなく、むしろ程よく心地いい温度を感じる。
 コーヒーを一口飲んだ咲良ちゃんは、ほっと息をつくと笑った。

「悔しいな。私が淹れるより美味しいです」
「そうなの?」
「……東條さんが淹れてくれたからかな」

 少し照れたように笑う顔が可愛くて、このまま時が止まってもいいとさえ思った。