愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「ああ、ごめん……美味しいよ。食事ってこんなに温かいものなんだな」

 それは料理の温かさだけじゃない。
 咲良ちゃんがいて、向かい合って食べるこの瞬間だから味わえるものなんだろう。

 忙しく出勤の準備をする母が、コーヒーを飲む姿が浮かんだ。
 皿にのったリンゴは皮も食べられるからと、八等分にして種だけ取り除いたもの。トーストしただけの食パンがのった皿。貧乏だったわけじゃないのに、貧相だった朝食を思い出して笑いが込み上げた。

 咲良ちゃんのご飯とは比べ物にならないのに、幼かった俺にはあの朝食がなにより幸せだった。忙しかった母と時間をすごせたからだろう。

 込み上げた涙を堪え、もう一度ポトフを口に運んだ。すると、箸を止めた咲良ちゃんが優しい声で「ご飯って温度もご馳走なんですよ」といった。

「料理には適温があるし、人と一緒に食べると、よりいっそう温かく感じますよね」
「そうだね……忘れていたよ」