愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「だから、私のお弁当のついでですから、その計算がおかしいんですよ」
「そんなことはない。東京の平均時給は1,350円。百歩譲って一日一時間の労働として月に換算した約4万だ」
「ううっ……ダメです。三万です!」
「咲良ちゃん、意外と強情だな。それだと、俺の気持ちが済まないんだが」
「だって、そんなにお金もらったら手抜きできないじゃないですか!」

 まったく譲る気のない咲良ちゃんは少し俯いて「それに」と声を小さくする。

「お金をもらって、中身にガッカリされたら……立ち直れません」

 いや、好きな子が作った料理にガッカリするとかないだろう。それに、さざんかでバイトをしていて料理も手伝っている。下拵えが丁寧だと店長も褒めていたのを考えたら、期待の方が大きい。
 期待という文字が頭に浮かび、はたと気付いた。
 そうか、俺は期待値を上乗せしすぎたのか。

 しかし俺としても、譲る気はない。なにかいい妥協案はないかと思ったその時、スマホの画面が光った。そこには、荒木の文字が浮かぶ。

「ごめん、ちょっと出ていいかな?」
「あ、はい……」

 困り顔のまま頷いた咲良ちゃんに申し訳なく思いながら出ると、耳元で「遅い!」と怒鳴り声が響いた。