愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

 恐る恐るといった風に、咲良ちゃんが尋ねた。
 ブレーキを踏み、素直に「そうだろうね」と返すと、咲良ちゃんは俯いたまま黙り込んでしまった。

 空気が重い。そうしてしまったのは、俺自身なんだけど。
 咲良ちゃんなら俺のことをわかってくれる。無意識にそう期待していたのかもしれない。

 短い沈黙のあと、いつも【珈琲さざんか】で出迎えてくれる笑顔を思い浮かべながら、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。

 咲良ちゃんの笑顔は、どの客にも向けられていると十分わかっている。だけど、それが俺の支えになっていたのも事実。心の中では、俺にだけ向けてくれたらいいのにと思うことだってある。
 だから、心配してくれたことが嬉しくて、少し浮かれていたようだ。

 こんなことを知られたら、逆に嫌われるかもな。
 ベンチャー企業の社長って肩書があっても、三十路手前の俺はオジサン予備軍だろうし。いや、俺が自分をオジサンっていった時、しっかり否定されてないから、すでにオジサン枠かもしれないか。

 オジサンでかまわないが、その笑顔が曇るのは見たくない。見たくないのに、顔を曇らせる理由が俺の心配してだと嬉しく思ってしまう自分もいる。