買い物を済ませて車に戻ると、咲良ちゃんが自分の分は払うと言い出した。

「後輩にお金を出させられないよ。まだ学生だし」
「でも、東條さんが私の分まで払うことはないです」
「そう高いものを買ったわけじゃないし、気にしないの」
「気にしますよ!」

 納得いかない顔の咲良ちゃんに「バイト先まで送るよ」といえば、またさらに慌てだした。

「そんなご迷惑かけられません! お弁当まで買ってもらった上、送ってもらうなんて」
「咲良ちゃんって、結構、頑固者だね」

 俺としては甘えてもらいたいが、女の子はこれくらい警戒心があった方が正解だろう。悪い大人や男も世の中にいるわけだし。
 きっとお母さんの教育の賜物なのだろうな。

 あわあわと困る様子が可愛くて、つい微笑ましく思ってしまう。

「じゃあ、こうしよう。お弁当を買ってあげた代わりに、オジサンの気晴らしドライブに付き合ってくれないかな」
「……はい?」
「バイト先までの短い時間、俺にちょうだい。それとも、お弁当の代金じゃ足りないかな」

 助手席のドアを開け、さあ乗ってといえば、咲良ちゃんは観念したように「わかりました」といった。