愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

 18時を過ぎるとここはバーに変わこともあり、私のバイト業務は、バーで出すおつまみや軽食に使う野菜の仕込みも含まれている。
 ホットサンドに使う千切りキャベツの用意をしたり、自家製ピクルスの仕込みをしたりで、そう難しいことはない。

 いつものようにカウンターの中でキャベツを切っていると、カップを磨く店長が声をかけてきた。

「坂下さんにも、そろそろコーヒーの淹れ方を覚えてもらおうかな」
「本当ですか!?」
「うん。そう難しいことではないし、覚えてもらえると私も助かるからね」

 目元にしわを寄せて朗らかに笑う店長は、それにと呟いた。
 
「坂下さんのコーヒーを飲みたそうな常連さんもいるからね」
「……私のコーヒーを、ですか?」

 そんな奇特な人がいるのだろうか。

 首を傾げていると、入り口に下げられた呼び鈴が鳴った。
 自然と視線をドアに向けると、常連の東條さんがひらひらと手を振って入ってきた。

 スーツをカジュアルに着こなす東條さんは「今日は一段と寒いね」といいながらマフラーを解いた。オレンジと茶色のストライプ柄は、秋から冬へ移り行くこの季節を表しているようで、スマートな彼によく似合っている。