愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「咲良ちゃんのお母さんに挨拶するとき、恋人ではなく、婚約者として挨拶したい。お母さんに、結婚の許しをもらいに行っていいかな?」

 一度は引っ込んだ涙がまた溢れてくる。
 はいと素直な返事がこぼれた。

 椅子を降りた一織さんが、私の頭を胸に引き寄せるようにして抱き締める。
 いつにない早鐘が耳に響いた。

「それと、咲良ちゃんのお母さんが許してくれたら、一緒に暮らそう」

 耳元で甘えるように「ダメかな?」なんて訊かれて断るなんて、できるわけがないじゃない。こんなに暖かい腕に抱き締められたら、もう、一人の部屋に帰りたいなんて思えなくなっちゃうじゃない。

「毎朝のコーヒーを淹れさせてほしいんだ」
「……私のコーヒーは美味しくなかったですか?」
「違うよ。咲良ちゃんのコーヒーは、二人でゆっくりすごす時の特別な一杯にしたい。忙しい朝に飲むのは俺とコーヒーメーカーに任せてほしいなって。……どうかな?」

 優しい声が胸に響く。それに応えるようにして、一織さんの背中に両手を回した。

「それなら、私からも、もう一つお願いしていいですか?」
「ふふっ、咲良ちゃんのお願いなら、いくらでも聞くよ」