愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「……私を脅す気か、一織」

 唸るような声に、顧問弁護士が「示談のご提案があります」と告げた。
 東條社長は訴状を再び手に取ると、深く息を吸い、無言のまま椅子へと腰を落とした。その姿から威圧感は消え失せ、寂しささえ感じられた。

 ◇

 ライフメトリクス社に戻った私たちを出迎えてくれた副社長の荒木さんは、盛大な安堵の息をつくとその場に座り込んだ。

「こういうトラブルはこれっきりにしてくれよな」
「ああ、もう大丈夫だ。今後、うちの経営に不当介入しないことも、示談内容に盛り込んだ」
「そりゃよかったよ」

 のそのそと立ち上がった荒木さんは私を見ると、口角を上げ、一織さんの背をバシバシと叩いて「頼むぞ」といった。
 
「可愛い嫁さんも見つかったんだし、今まで以上に働いてもらわないとな!」

 荒木さんの言葉で、社内に釣られた笑い声が上がり、一織さんの顔も柔らかな笑みをたたえる。それが嬉しいやら恥ずかしいやらで、私の頬は熱くなるばかりだ。

「ケータリング届きましたよ!」
「皆さん、会議室に移動してくださーい!」
「示談の成功を祝いつつ、そろそろ納会始めましょう」
「坂下さんも食べていってね」