愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「うん」
「じゃあ、お父さんが好きだった日本酒でも買っておこうかしらね」

 ふふっと笑う声にほっとして「ありがとう」といった時、フロントガラスの向こうに東條建設の本社ビルが見えてきた。

「また後で連絡するから」
「元気そうな声が聞けてよかったわ。頑張りなさいね」

 お母さんの優しい声に心が軽くなる。

「頑張ってくるよ。いってきます」

 通話を切ってスマホを鞄に入れると、一織さんが「大丈夫だ」といった。

 準備は抜かりない。
 クリスマスの日から、私たちは顧問弁護士を交えて東條建設社長を訴訟する準備を進めてきた。麗華さんと結城くんにも協力をしてもらい、一織さんとの婚約が不本意なものだったことを証明する協力も得た。

 やれることはやってきた。後は、私たちの意志を貫くだけよ。
 
 そびえ立つ東條建設のビルを前にして、味わったことのない緊張に震えそうになる足を踏みしめる。
 一織さんの顧問弁護士とともに、私たちはエントランスへと踏み入った。