愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

「うちの副社長が、見栄も時には必要だって煩くてな」
「はあ……そんなもんですかね?」
「どうだろうな。けど、咲良ちゃんが喜んでくれたら、安い買い物だった気がしてきたよ」
「いやいや、車は高い買い物ですから!」

 たまたま乗せてもらったにすぎない私で帳消しになるような値段じゃないはずだ。

 ふと窓の外を見て、いつの間にか車が加速していることに気付いた。信号で止まる時も、とても静かで身体に余計な負担がかからない。外観はとてもスマートだし、なんて静かな車なんだろう。

「東條さんって、社長さんだったんですね」
「独立したばかりで、まだ駆け出しだけどな」
「いつもお疲れでお店に来るから、どんなブラック企業で働いているのかと思ってました」

 再び静かに発進する車内から外を眺めながら、素直に思っていたことを話すと、また大笑いされる。

「福利厚生はちゃんとしてるよ。けど、まあ……俺は別だからさ」
「別って?」
「今動かないと後悔するっていうか、じっとしていられないといかね」

 真剣な眼差しがフロントガラスの向こうに向けられていた。その声は少し固くて、一瞬、焦りのようなものが見えたような気がした。