訴訟の準備を進めて五日がすぎようとしていた。
顧問弁護士から必要な書類が整ったと連絡を受けた一織さんは、私を車に乗せて東條建設本社へと向かった。
その車内で、スマホを見つめた私は深く息を吸った。
ディスプレイに出ている文字はお母さん。
私はこれから、お母さんに一世一代の報告、というかお願いをしようとしている。
通話を繋げて数コール目に、穏やかな声が「久しぶりね」といった。後ろから賑やかなテレビの音がする。
「お母さん。ごめんね連絡遅くなって」
「しばらく連絡がないから心配してたのよ。風邪ひいてない?」
「元気だよ。私は丈夫が取り柄なの、お母さん知ってるでしょ」
笑って話すと、運転席の一織さんがくすりと笑った。
「あのね、お母さん。年末のことなんだけどね」
「そうそう。こっちに帰ってこれるの? お酒は、まだ飲めなかったわよね」
「そうだね……帰ろうと思ってる。その時、会ってほしい人がいるの」
努めて冷静に告げれば、お母さんは少し黙った。私の真剣な思いが伝わったのだろうか。
「……そう。その人はお酒飲めるの?」
顧問弁護士から必要な書類が整ったと連絡を受けた一織さんは、私を車に乗せて東條建設本社へと向かった。
その車内で、スマホを見つめた私は深く息を吸った。
ディスプレイに出ている文字はお母さん。
私はこれから、お母さんに一世一代の報告、というかお願いをしようとしている。
通話を繋げて数コール目に、穏やかな声が「久しぶりね」といった。後ろから賑やかなテレビの音がする。
「お母さん。ごめんね連絡遅くなって」
「しばらく連絡がないから心配してたのよ。風邪ひいてない?」
「元気だよ。私は丈夫が取り柄なの、お母さん知ってるでしょ」
笑って話すと、運転席の一織さんがくすりと笑った。
「あのね、お母さん。年末のことなんだけどね」
「そうそう。こっちに帰ってこれるの? お酒は、まだ飲めなかったわよね」
「そうだね……帰ろうと思ってる。その時、会ってほしい人がいるの」
努めて冷静に告げれば、お母さんは少し黙った。私の真剣な思いが伝わったのだろうか。
「……そう。その人はお酒飲めるの?」


