だけど、必死な陽菜ちゃんを見ていると協力してあげたい気持ちにもなる。

「目当ての男が来るんだってさ」
「一生のお願いだから!」
「……一織さんに相談していいかな?」
「えっ!? 彼氏に確認って、それ、絶対ダメっていわれるパターンじゃん!!」
「陽菜、諦めなよ。坂下さんの判断は正しいよ」

 苦笑しながらノートパソコンを閉じた猪原さんは、テーブルに崩れた陽菜ちゃんの頭をポンポンっと叩いた。
 その横でスマホを開いて、手短にメッセージを用意して一織さんへ送った。すると、数分と待たずに返事があった。

「……いいって」

 ぼそりいうと、陽菜ちゃんは弾かれたように顔を上げ、猪原さんは「ま?」と呟く。二人の視線がスマホに落ちた。

「場所と時間は教えてほしいって書いてあるけど、行っていいって」
「神! 咲良の彼氏、神でしょ!!」
「大人の余裕ってやつかな?」

 唖然とする猪原さんは、テンションがおかしくなっている陽菜ちゃんに代わって場所を教えてくれた。それを一織さんに伝えると、すぐさま「楽しんでおいで」と短い返事があった。