「……美味い」
「でしょう!」

 予想外にも美味いホットオレンジジュースをまじまじと見ていると、咲良ちゃんは自慢げに笑った。

 この夜、二人で他愛もないことを話した。いつから好きになったのかとか、どこが好きなのかとか。
 お互いに少し照れながら、手を繋いでベッドに横になった。そうして、心地よい眠りの訪れが会話を邪魔するまで、幸せに浸り続けた。

 どうやってあの男、東條秀儀の支配から逃げようか。そればかりを考えてきた夜とは違い、穏やかで暖かな夜だった。
 だけど数日後、俺は東條建設本社に呼び出され、冷ややかな言葉を突きつけられた。

「初心な小娘を、お前の母と同じ目に合わせるつもりか?」

 射貫くような鋭い眼差しを前にして、背筋を冷たい汗が伝い落ちた。