愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

 ドキドキと鼓動を速めて硬直していると、一織さんがふっと笑った。

「そんな緊張しないで。咲良ちゃんの嫌がることはしないよ。ただ……キスくらいは許してくれるかな?」

 私の耳たぶをいじっていた指が、唇を撫でた。
 ぎこちなく頷くと、一織さんは「大好きだよ」と呟く。

「婚約のことはどうにかする。だから俺を信じて側にいてくれ」

 数分前には幸せにできないなんて涙を流したのに、それをすっかり忘れたような顔で、一織さんは私を見つめていた。
 はいと返事をすれば唇に熱い吐息が触れ、啄むような優しい口づけをされた。

 麗華さんから婚約の話を聞いて、あれほど不安だったのになったのに。私も現金なものだと思いながら、マンションに向かう車の中で心が満たされるのを感じていた。
 一織さんも同じなのか、ハンドルを握る横顔を見つめていると照れたように笑ってくれる。

 交差点で立ち止まる度に、まるで私がいるのを確かめるように手を握られ、名前を呼んでといわれた。
 自分のことをオジサンなんていうのに、カッコつけるどころか、ずいぶんと甘えたなんだなって気付いたら可笑しくなった。それと同時に甘えてくれることが嬉しくて、どこまでも一織さんを甘やかしてしまいそうな自分にも気付いた。