愛情ごはんを届けたい ~エリート社長は過労死寸前!? あなたの心と体を私の料理で癒します~

 大人たちの話し合いには入れてもらえず、嫌だということもできない。「無力な子どもだったんだ」と呟いた東條さんは、その後のことも話してくれた。
 養子となっても父親を親と思えず、いつか家を出てやると思いながら過ごしたこと。国立大にこだわって受験したのも父親への反発だったこと。

 自嘲気味に笑いながらも、抑揚のない声で語られる過去は、まるで小説かドラマのあらすじのようだった。

「ライフメトリクスを立ち上げたのも、東條を出るためだった。だけど、俺の計画はあの男にバレ、事業を潰されたくなかったら、橘の娘と結婚しろといわれた。それが、咲良ちゃんと出逢う前のことだ」

 東條さんが必死に働いている理由が、とても寂しいもののように感じた。どれだけの悲しみと葛藤を抱えて、生きてきたのだろう。

 初めて車に乗せてもらった日に、今動かないと後悔するといっていたことを、ふと思い出した。
 ずっと、一人で足掻いて生きてきたんだ。

 父親を亡くした私の悲しみは、お母さんが埋めてくれた。だけど、東條さんにはそんな人がいなかったんだ。