人間には、たくさんの種類がある。

オレンジジュースみたいにたまにすっぱくておいしい人とか、

ぶどうジュースみたいに一見怖いけど案外優しい味の人とか、

時には炭酸みたいに、ぱちぱちと弾けるように明るくて刺激的な人もいる。

でも、水みたいに透明で、“味のしない人”がたまにいる。

海の、しょっぱい水とはまるで違う。本当に、なんの味もしない人だ。

なんの着色料も使っていなくて、そのせいでどこにも馴染めない。

そもそも着色料を使うことに抵抗があるのかもしれない。あのままの透明できれいな色を、カラフルに汚したくなかったのかもしれない。

周りから距離を置かれる水は、なんのオーラも放っていなかった。

だって、なんにも色がないから。

何を考えているのかもわからないし、触れたらすぐにコップからこぼれて、知らないうちに消えてしまいそうだと思った。

そんな人が、少し羨ましく感じた。染まらない。溶媒と戯れない。他の色を一切入れない。

美しいな。

黒く染まりきったわたしには、あの人がきれいできれいで仕方なくて、胸の奥が壊れそうになるほど羨ましかった。

憎い。嫌いだ。

黒いわたしは、心から透明な水を恨んだ。