「ん……っ」
抗えない甘さに、唇から小さく声が漏れる。すると、彼の腕の力が一層強くなった。
私はされるがままになっている自分に少しだけ戸惑いながらも、そっと彼の背中に腕を回した。私の指先が触れた制服越しに伝わる悠太の心臓は、まるでこれから走り出すかのように痛いほど早く脈打っている。
逃がさないと言わんばかりにきつく抱き締められ、熱い吐息が零れる。微かに汗の混じった、でも甘く感じる彼の匂いが私を包み込んだ。
「センパイ……俺しか見ないで」
懇願にも似たその声は、掠れて、低く、痺れるような音になって鼓膜に届く。
「ゆう、た……」
私が彼の名を呼ぶと、悠太は一瞬、私から唇を離したが、すぐに額と額をくっつけて、瞳を熱っぽく細めた。
「……もう引けないよ。俺のものにするから、覚悟してね」
その低く甘い響きは、もはや問いかけでも懇願でもなく、私の逃げ道を完全に塞いでしまった。
