「……センパイ、俺を」

私に触れた手がとても熱いから……

「好きになってよ」

男の子なんだと思った。

「まっ……」

「待たない」

瞬く間に、なんてスムーズにはいかなくて。私の頬を包み込む大きな彼の瞳が、不安と熱をはらんで、まるで手探りをするように、少しずつ、ほんの少しずつ近づいてくる。その距離がもどかしくて、でも、その不器用な優しさに胸が高鳴る。

頬に触れた手があまりにも優しくて、私を溶かしていく。でも、その手のひらがほんの少し、ほんの少しだけ震えているから、私はゆっくりと瞳を閉じた。

「ん……」

秋の夜のひんやりとした風が、私たちの間をそっと吹き抜けていく。それなのに、触れるか触れないかという柔らかな温もりが、私の唇にそっと触れた瞬間、全身に抗えない熱が広がっていく。ただ触れるだけの、まるで確認し合うような、探るような優しいキスが、私の静まっていた鼓動を乱暴に変えていく。

「ん、はぁ……」

思わず漏れた甘い吐息は、静かな夜の空気に吸い込まれていく。彼は少しだけ唇を離して、熱っぽい眼差しで私を見下ろした。

「……そんな声、出さないでよ」

彼の声は低く、少し掠れていて、まるで自分を抑えつけているみたい。

「もっと……したく、なる」

今度は、触れるだけのキスじゃなかった。唇を噛むような焦燥と、逃がさないと言わんばかりの強い力が、私を強引に縫い止める。微かに震えていたはずの彼はもうどこにもいなくて、ただ私を求める熱だけが押し寄せてくる。彼の吐息が熱くて、少しだけ乱暴で、その熱に、私の頭の芯までとろりと溶かされていく。

息も忘れそうなほどに。