貴方と奏でる夜想曲 貴女に奏でる小夜曲

私は彼の首に手を回すと、想いのままにキスをした。

素直に大胆になれるのは“彼”だから。

「……はしたない?」

「まさか。可愛いくてカッコよくて最高だよ」

「その言葉、そっくりそのまま返すから」

大人になっても、誰かをこんなにまっすぐ好きになれるなんて。

幸せいっぱいで、なんだか無敵な感じ?

(なにしろ“装備”だって完璧だしね!)

「電気、消したくなったら消すとかでもいい?」

「もちろん。そのときはいつでも言って」

「わかった」

本当は今すぐ消したい気持ちもやまやま。

だって、自分のカラダに自信なんてないし、恥ずかしいもの。

けど、ミッションを完遂するまでは――。

ベッドの上に仲良く並ぶ2つの枕。

1つは私のために彼が買ってくれたもので、洗いたてのカバーが掛けられている。

「瑞樹はどっち側がいい?」

「このまま、こっちがいい」

私は新品の枕を指差すと、ベッドの上へ素早くあがった。

「僕もそろそろ新調しようかなあ、枕」

そんなことを言いながら、彼がのっそり後に続く。

(そういえば……)

ベッドの上にぺたんと座ったまま、ふと尋ねる。

「柊はどれくらい視力悪いの?」

「僕?」

やや首を傾げて、彼は考える表情をした。

「そうねえ、僕は……」

彼の手がそっと私の肩に置かれ、甘い気配が間近に迫る。

(えっ、と……)

「瑞樹が思っているほど悪くないかも?」

押し倒されるというよりも、ゆるゆる優しく寝かされて、私はあっと言う間に組み敷かれた。

「ここまで寄らなきゃ瑞樹の顔がわからない、なんてことはないからね」

(ち、近いよ!?しかも、見えるくせにっ……!)

まだまだ見慣れない眼鏡なしの彼の素顔。

至近距離でその端正な顔を見せられて、いっそう鼓動が速くなる。

電気はまだ消さないと言ったのは自分なのに、既にちょっと後悔したりして。

(だって、こんな……)

嬉しくて、気恥ずかしくて――淡い期待に、こんなに甘く胸を締めつけられるなんて。

そんな事情を知ってか知らずか、彼は余裕綽々で私を見下ろしている。

「僕、視力に左右差かあるほうで」

(ゃあっ……)

髪にキス、おでこにキス、耳にキス。

ちょっとくすぐったい意地悪なキスに、思わず甘い声が出そうになる。

なのに、彼ときたら――。

「だから、両眼だと案外見えるんだよ」

淡々と話を続けながら、頬に、瞼に、鼻先に、優しいキスを落としていくのだもの。

(もう、くすぐったいのと、気持ちいいのと、わけがわからない……)

「とはいえ、仕事や運転には支障があるから、眼鏡は常用しているのだよ」

「そう、なんだね……っ」

(あぁ、もうっ……)

首筋に押し当てられた唇は、柔らかくて、意地悪で。

くすぐったさと、その甘い刺激に、思わずびくんと身をよじらせる。

「可愛いね」

「……パジャマが、ね」

「あなたねぇ」

あきれた調子で言いながら、彼はとびきり優しく微笑んだ。

「いいけど。素直になれない瑞樹も好きだから」

ふわりと重なる唇に、とろけるように甘いキス。

深く口づけられるほど、心も体も溶けていく。

(なんだろう、この感じ……)

ドキドキするけど、嫌な緊張はなくて、むしろとても寛いでいる。

安心してすべてを彼に委ねられるのが、とっても幸せで心地よい。

離れる唇の名残惜しさと、甘い切なさ。

ちょっと照れながら、私はあらためて伝えた。

「あの……素敵なパジャマ、本当にありがとう」

私のために一緒に選んで買ってくれて。

こうして、柊の日常へ迎え入れてくれて。

「こちらこそ、気に入ってくれてよかった」

彼が嬉しいと、もちろん私も嬉しくて。

「大事に着るね」

思わずふにゃりと頬が緩む。

「せっかく着てくれたのに、僕は脱がそうとしているわけだけど」

「それは……うん」

器用にボタンを外されて、胸元はすっかりはだけて、ズボンもあっという間に脱がされた。

あらわになった下着に、中途半端に乱れたパジャマが、なんだかひどくしどけない、