好きな人がいた。

びっくりするほど可愛くて、愛らしい人だった。

顔も仕草も性格も、ぜんぶぜんぶかわいくて、どうしようもなく好きだった。


だから、些細なことでその人に幻滅した私に、幻滅した。

あれ、私ってこの人の事、自分で思っているよりも好きじゃなかったんだ。自分でも驚いた。

そしてその事実に、酷く傷ついた。私はこんなにも、あなたのことが好きだったのに、と。

はじめて、大声で好きだと言えるような人だったのに。何か言われる度に心臓がドキドキして、嬉しくて、苦しかったのに。

でも、結婚して生涯を共にしたいか、と問われたら違った。私は、その人がただ好きなだけだったんだと思う。


私は、ただ恋愛をしている自分に酔っていたのだ。

恋愛をして、どんどん可愛くなる私。恋する乙女の瞳は可愛いと心の底で無意識に思い続け、恋愛にずっと酔っていた。

それだけだった。