特別なにかを欲したわけではない。
誰もがうらやむ家柄だったり、
整った容姿だったり、
利口な頭だったり……
誰しもが欲しがるそんなものはいらなくて、
けれど一つだけ、一つだけほしいものがあった。
そのために誰にも何も言われないように見た目を磨いて、
色んなことに答えれるように勉強もした。
でも……、
「あんたなんかいらない……!!!」
全部意味がなかった。
私が向けてほしい視線も、触ってほしい手も、かけてほしい言葉も、
全部違う人にあげていて。
私の存在なんてそこになかった。
「もう……いい…。」
呟いた言葉は、頬に流れた一筋の雫とともに消えていった……。
