失恋したら、御曹司の愛に囚われました。

〇土曜日 午前10時頃 六花の自宅の外
快晴の空と、六花の自宅(かわいらしい一軒家)の絵が描かれる。
モノローグ『雲一つない真っ青な五月晴れの今日は』『絶好のお出かけ日和』
『綾瀬』という表札がある、おしゃれなレンガの門の前。
ブラウスにスカート。足元はスニーカーという、動きやすいかつおしゃれな服装をした六花がげんなりとした表情で門の前に立つ。
モノローグ『本日、私はこれからデートに行く予定です』
六花・心の声(ついに当日が来てしまった……)
冷や汗をかく六花の横顔のアップ。
六花・心の声(柊くんにデートに誘われたあと、すぐに断ったんだけど……)(まったく聞いてくれなかったんだよね)
4話の「六花、デートしようよ」と目を輝かせた結都→「絶対やだ」と結都を拒否する六花→「強制参加だよ」と言って逃げようとした六花をつかまえる、目に光の入ってない結都のデフォルメイラストが描かれる。
六花・心の声(でも、バックレたらバックレたで、あの柊くんのことだから、地の果てまで追い駆けてきそうだし……)
はぁ~……と意気消沈してため息をつく六花。すると、六花の前に黒い高級車が停まる。
ドアが自動で開き、私服の結都(襟付きシャツの上から半袖のリネンのシャツを羽織っている。下はテーパードパンツと黒のレザースニーカー)が六花に向かって微笑みを浮かべる。
結都「六花、おはよう。さあ、早く乗って」
六花「お邪魔します」
結都「そんな、他人行儀にならずに。今日は目いっぱい楽しもう!」
六花「えっ⁉」
テンションの高い結都に目を丸くする六花。
六花・心の声(目いっぱい楽しむ……? 私が、柊くんと目いっぱいデートを楽しむ……?)
仲良く手を繋いで、「アハハ」「ウフフ」とキャッキャとはしゃいでいる六花と結都の姿の想像図。
六花・心の声(そんなこと、出来る予感がしないんですけど‼)
ここでテーマパークの入場門のカット。

〇テーマパークの広場
大勢のお客さんでにぎわっているテーマパーク。巨大なジェットコースターやメリーゴーランドなどがある。
結都「すごい……! こんなに賑わってるんだ……!」
六花「柊くん、テーマパークに行ったことないの?」
結都「うん。実は僕、今日生まれて初めてここに来たんだ」
六花「えっ⁉ そうなの⁉」
結都「家の方針で、なかなかこういう所には連れて行ってもらえなかったんだよ」
六花・心の声(そういえば柊くんって、理事長の息子だもんね)(お金持ちの御曹司だから、厳しく育てられてたのかも)(あっ)
六花、ふと近くにあるショップから出て来た同い年ぐらいの女の子グループ(4~5人くらい)を目で追う。
彼女たちは、このテーマパークで買えるリボンやレースがついた白い猫耳がついたカチューシャをしている。
結都「あれが欲しいの?」
六花「いや、私は……」
結都「僕もちょうど欲しかったんだよね。お揃いで買おうよ」
六花「えっ、いやいいって!」
断る六花の制止も聞かずに、結都は六花を連れてショップへと入って行く。
※時間の経過
六花「結局買ってもらっちゃった……」
六花、さっきの女子と色違いの黒の猫耳カチューシャをして、恥ずかしそうに顔を赤らめる六花。
結都も猫耳カチューシャをしているが、こちらは小さいシルクハットが付いている。
結都「六花、かわいい!」「一緒に写真を撮ろう!」
六花「撮らない」
結都「いいから、記念に。お願い!」
手を合わせて必死に頼み込む結都。
六花・心の声(そういや柊くんってテーマパーク、初めてだったもんね。ま、いっか)
六花「いいよ。一緒に撮ろう」
結都「嬉しい……。ありがとう」
喜びを噛みしめた結都、自分のスマホで六花とツーショットを撮る。
結都「ありがとう、六花。家宝にする……!」
六花「何言ってんの。そこまで大したものじゃないのに……」「それより、何か乗り物に乗って見ない?
結都「乗り物?」
結都から目を離し、ジェットコースターを指差す六花。
六花「ほら、あのジェットコースターとか……、乗ってみない?」
六花、くるっと後ろを振り返る。しかし、結都はどこにもいない。
六花・心の声(あれ?)(柊くんの返事がない)
六花「柊くん? どこ?」
慌てる六花。しかし、あたりは人ごみで、結都を見つけることができない。
六花・心の声(もしかして私たち、はぐれた……⁉)
繭「あれー? もしかして、綾瀬さん?」
猫のカチューシャをした、ガーリーファッションの繭と、私服の拓海が六花の前に現れる。
六花「香月さん、拓海……」
繭「へー、一人で来てたんだ? 寂しくないのー?」
六花「別に、柊くんも一緒だから……」
拓海、ここでイラッとして顔を歪ませる。
繭「ふーん? でも、肝心の柊くんは見当たらないみたいだけど?」「もしかして、あなたといるのが嫌になったとか?」
クスッと笑う繭。
拓海「まあ、綾瀬は性格きついところがあるからな。仕方ないよ、繭」
結都「六花の性格がきつい?」
繭と拓海の背後から結都が現れる。ドキッとする二人。
結都「僕は六花のそういうところもかわいいと思うけど? ねえ、藤原くん」
微笑む結都。拓海、イラッとする。
拓海「おい、もう行こうぜ」
繭「えっ? 何で?」
拓海「いいから。こいつらなんかに付き合ってらんねえよ!」
拓海、繭を引きずって退散する。
六花・心の声(また柊くんに助けられてしまった……)
結都「さっきは怖かったよね。ごめんね。さっき、人ごみに流されてしまって……」※申し訳なさそうな顔
六花「別に、大したことないから……」
結都「そっか。じゃあ、気を取り直して楽しもうか」
六花「まあ、いいけど」
※ここで、ジェットコースターに隣同士で乗る六花と結都、レストランであーんしようとする結都を拒否する六花、ショップでキーホルダーを吟味する六花とそれを優しく見守る結都の姿のカットが描かれる。

〇夕暮れ時 観覧車のゴンドラの中
六花、少し遊び疲れた様子。観覧車の窓にもたれるように頭をくっつけている。
六花・心の声(思ってたより、けっこう遊んだな……)(柊くんはというと、相変わらず平常運転だけど)
外の景色に目もくれず、じっと六花を見つめる結都。(六花の向かいの席に座っている)
結都「六花、今日は楽しかった?」
六花「ま、まあ……」
結都「僕のいいところは知ってもらえた?」
六花、一瞬拓海と繭から自分を助けてくれた結都のことを思い出す。
六花「ま、まあ……」
結都「なんか反応が薄いね。まあ、いいや」
結都、六花の隣に座る。六花、目を丸くする。
六花「え? ちょっと、柊く……」
結都「ほら、じっとしてて」
六花、言われた通りにじっとする。結都が自分の首の後ろに手を回したことで、ぎゅっと目をつぶる。
六花・心の声(抱きしめられることはあったけど、向かい合ってこの距離だと、緊張する……)
結都「六花、目を開けて」
六花「これって……」
六花の首には、雪の結晶の形をしたキラキラ輝くネックレス。
結都「実は、今日のデートで渡そうと思ってたんだ。二人きりでいられる、星が見えるこの場所でね」
六花と結都が並んで座る引きの絵。二人の背景に、窓に映る一番星が描かれている。
結都「僕にとっての六花は、これくらい輝いているんだよ」
六花、ドキッとして顔が真っ赤になる。
六花・心の声(なっ……、何⁉)(何で私、ドキッとしてるの⁉)(でも、今の柊くん)(なんだかとても、かっこよく見える……)
結都「さあ、六花。もう降りるよ」
結都の言葉にハッとする六花。うなずいて、結都とゴンドラを降りる。
六花・心の声(私、あんなに大きな観覧車に乗っていたのに……)
六花、巨大な観覧車を見上げる。
モノローグ『ゴンドラに乗る前は、ゆっくりと永遠みたいに時間をかけて回って見えていたのに』『今は、楽しい夢から覚めたみたいに、あっという間だったように思える』
結都「ごめん、六花。僕、ちょっとトイレに行ってくる」
六花「あ、うん。いってらっしゃい」
結都が急いで近くのトイレの建物へ走って行く。建物の裏側に回るなり、テーパードパンツのポケットから取り出したスマホを耳に当て、険しい顔で電話をする。
結都「もしもし、父さん?」「ああ、……わかってるよ。例の件だろ?」「そのお見合いには必ず出席するよ」