失恋したら、御曹司の愛に囚われました。

〇過去 5年前の8月 塾の教室
モノローグ『忘れもしない』『きみに出会ったのは、僕が絶望の淵にいたあの夏の夜のこと』
先生「柊、頑張ったな。今回のテストも満点だ」
結都「やったあ!」
今よりずっと小柄であどけない顔立ちにメガネをかけた結都が、満面のテストを受け取って、ぱあっと満面の笑顔を浮かべる。
先生「みんなも柊を見習って頑張るんだぞー」
生徒たち「はーい」
そんな結都を面白くなさそうに、憎悪に満ちた表情で睨む男子2人の姿(アップ)。

〇夜 塾のビルの裏側
結都が壁に向かって強く突き飛ばされている瞬間。教室で結都を睨んでいた男子2人は怒った顔。結都を見下ろしている。
男子1「だっせー! 弱すぎだろ、このメガネ」
男子2「勉強しかできないくせに、調子乗るからいけねーんだぞ!」
結都は涙目。半袖のワイシャツにシワが寄り、土汚れが付着。
結都・心の声(僕はただ、勉強を頑張ってただけなのに……)(どうしてここまで言われなきゃいけないんだろう……)
ズレたメガネのレンズの奥にある結都の目に、涙が浮かんでいるアップ。
次のコマで、ぎゅっと目をつぶっているアップ。
六花「何やってんの⁉」※声だけ
ハッと目を開く結都。ビクッとした男子二人。
男子二人が気まずそうな顔で後ろを振り返る。
現れたのは、結都たちと同じ塾のカバンを持ち、仁王立ちした小学6年生の六花(今よりも小柄で幼い顔立ち。シンプルな半袖ワンピースを着ている)。
六花「さっきの話、全部聞こえたよ。勉強しかできないって何?」「自分たちが勉強できてないから嫉妬してるの?」
男子1、2「「うぐっ……!」」
図星を突かれた二人はギクッとして一瞬言葉に詰まる。(六花のセリフ、「自分たちが勉強できてないから嫉妬してるの?」の吹き出しから矢印が2本伸びて、男子1、2の胸にグサッと突き刺さっている構図にする)
男子1「うっ……! うるせえ!」
男子2「だから何だってんだよ⁉ 悪いかよ⁉」
六花「別に嫉妬するのはかまわないと思う。でも、一人を集団でいじめてるそっちのほうが百億倍ダサいよ!」「あと、この件は先生にも報告済みだから。もうすぐ来るんじゃない?」
男子1「やばっ」
男子2「逃げろ!」
慌てて逃げて行く男子二人組。
結都は小さくなっていく二人の背中を呆然と見送ると、六花を見つめる。
月明かりに照らされて、凛として佇む六花。
結都の息をのんだ顔のアップ。瞳がキラキラと輝いている。
結都・心の声(まるで、僕だけのヒーローだと思った)(凛とした佇まい、物怖じしない態度)(こんな女の子、初めて見た)
そんな結都に六花が手を差し伸べる。
六花「立てる?」
結都「あっ、うん……」
ドキドキしながら六花の手に触れる結都。
結都「あのっ……、ありがとう!」
六花、結都から手を離し、服の土汚れを手で軽く払う。
六花「きみ、そんなに大きな声が出るんだ」「さっきの二人に言い返してやればよかったのに」
結都「あっ、あのときは怖くて……。でも、きみが助けてくれて、本当に嬉しかった」
六花「そっか。ありがとっ!」
凛としていた表情の六花が笑顔になる。
そんな六花に、結都はドキッと胸を高鳴らせ、顔が真っ赤になる。※恋に落ちた瞬間だとわかりやすく。

〇現在 体育館裏
結都「それから、六花は僕の心の中で輝き続ける光になった。あのときから、僕はきみに恋をしているんだ」
胸に手を当てて目を伏せて、頬を赤らめる結都。穏やかな表情をしている。
結都「でも……、僕たちが通っていた塾はあまりにも大きくて、六花を探すのにとても難航して……」
落ち込む結都の横顔。その後ろに巨大な塾のビルのデフォルメが、『どーん』という効果音と共に書かれている。
結都「名前を知ったころにはとっくに2学期になっていた。しかも、六花が塾を辞めたと知ったときは絶望したよ」
六花「私、あの塾では夏期講習だけ受けてたから……」
結都「でも、この学園で再会して、六花が僕の彼女になってくれた今は、本当に嬉しいよ! 僕たちは、運命の赤い糸で繋がってるんだね」
キラキラした結都の笑顔。
六花・心の声(また始まった……)
六花「運命だか何だか知らないけど……とりあえず、これからはもうその勝手な付き合ってる妄想はやめてくれる?」「そもそも私たち、付き合ってないし。付き合ってるなら、お互いのことをもっとよく知ってるはずでしょ?」
結都「僕は六花のことを何でも知ってるけど」
六花「私は知らないんだってば!」
結都「そっか……。じゃあ、六花に僕のことを知ってもらえばいい。そしたら、正式に付き合ってくれるってことだね」
六花「えっ⁉ そうは言ってないでしょ⁉」
目をキラキラ輝かせる結都に、たじたじと後ずさりをする六花。
だが、結都が六花の手を両手でガシッとつかむ。
結都「そうと決まれば六花、デートしようよ。僕のいいところをきみにたくさん知って欲しい」
六花「デート⁉」
モノローグ『ああもう! 何でこうなっちゃうの⁉』『なんだかどんどん、深みにハマっていく気がする……!』