〇学校の廊下
ざわざわと騒がしい廊下。そこにいる生徒たちがみんなが振り返って凝視する中、六花と結都が手を繋いで歩いている。
結都は堂々としているが、六花は肩身が狭そうに縮こまっている。
生徒1「あの湊くんが女子と手を繋いでる……」
生徒2「嘘でしょ? あたしたちには塩対応なのに……」
生徒3「もしかしてあの子が彼女なのかな?」
六花・心の声(き、気まずい……。一刻も早く柊くんから離れなきゃ)
六花、結都と繋いでいる手を引き抜こうとする。しかし、まったく動かない。
六花「あの、柊くん。いい加減その手離してくれる? さっきからじろじろ見られて嫌なんだけど」
結都「いいよ。でも、六花の席に着いてからにしよっか」
六花(結局最後まで離さないんかい……)
六花、引きつった笑顔。
※同じクラスという書き文字から六花と結都に向かって二つの矢印が伸びている。
???「あーっ‼」
六花と結都の目の前から大きな叫び声がする。
六花・心の声(最悪……、柊くんの過激派ファンクラブじゃん)
苦虫を嚙み潰したような顔をした六花と、きょとんとした結都の前に現れたのは、結都のファンクラブの女子たち。派手で大人びた容姿のリーダーを中央に、その取り巻きの女子が左右二人ずつ怒った顔で仁王立ちしている。
リーダー「ちょっと! 気安く結都に触らないで‼」
六花「いや、触られてるの私なんだけど……」
殺気だった顔のリーダーに、白けた顔の六花。
取り巻き1「結都くんはみんなのものなんだよ」
取り巻き2「そうだよ! 独り占めするなんて許さない!」
六花「別に独り占めしてないし……ってか、人の話聞いてた?」
結都「ふーん」
六花を自分に抱き寄せる結都。ファンクラブの女子たちに向かって、目に光の宿っていない冷たい笑みを向ける。
六花は嫌がって顔を背けているが、結都の腕に固定されるようにしてつかまっており、逃げることが出来ない状況。
結都「独り占めしてるのは僕のほうだけど」
リーダー「えっ……」
ピリッとした戦慄が走るリーダー。
結都「だって、六花は僕の彼女だし」
六花の耳元に唇を近づける結都。だが、目線はファンクラブの女子たちに向かっており、挑発しているような感じ。
結都と六花を中心に、廊下を上から見たアングル。「えぇ~っ⁉」
モノローグ『うっ、嘘でしょ……』『完全に外堀を埋められてんじゃん、私‼』
青い顔でショックを受ける六花。
〇昼休み 屋上
六花、親友の今井陽菜とお弁当を食べている。
二人はベンチに座っており、ひざの上にお弁当を広げている。
陽菜「六花、今日クラスで聞いたよ! 柊くんと付き合ってるって!」
六花・心の声(もう隣のクラスにも広まってたんだ……)
※『陽菜は隣のクラス』という注釈が入る。
六花「なわけないじゃん……」
陽菜「だよねー。だって、六花には藤原くんって彼氏がいるもんね!」
アハハ、と大きな口を開けた笑顔を浮かべているが、どこかほっとした表情の陽菜。
六花は少しうつむき、表情を硬くする。お弁当箱の中の卵焼きをつまもうとする箸の手を止める。
六花「いや、昨日拓海にフラれちゃって……」
陽菜「はあ⁉ どういうこと⁉」
六花「えっと……」
目を見開く陽菜に、六花が説明する。※ここで時間の経過
陽菜「何それひどい! 六花という彼女がいながら、内緒で女友達とデートしてたの⁉ 最低すぎ!」
六花に対して前のめりになり、拳を握って怒りをあらわにする陽菜。
六花「いいんだよ。もう別れたから」「あっちも私のこと最初から好きじゃなかったって言ってたしね」
諦めたような表情であさっての方向を見る六花。
陽菜「えっ? 六花がバレンタインに告白したとき、即OKしたのに?」
※回想 六花が拓海に「付き合ってください」とチョコが入ったプレゼントボックスを渡している。壁からこっそり陽菜が様子を見て応援しているイラストが描かれる。
陽菜「まあでも、別れて正解だよ!」「『最初から好きじゃなかった』なんて平気で言う男なんて忘れて、柊くんと付き合ったほうが幸せだよ!」
六花「でも、私別に柊くんに恋愛感情なんて持ってないし……。それに、こっちは勝手に執着されて迷惑っていうか……」
陽菜「ちょっと六花!」「このまま柊くんを逃す気? もったいないよ!」
声をひそめて、真剣な顔つきになる陽菜。
陽菜「だって、柊くんってこの学校の理事長の息子なんだよ⁉ それに、成績優秀で将来性も抜群!」「そんな人があんなにベタ惚れしてくれてるんだから、今のうちにつかまえとかなきゃもったいないって!」
六花「そうは言ってもね……」
冷めた顔をして、空っぽのお弁当箱の蓋をする六花。
六花「惚れられてるのをいいことに、あの人を利用する気はさらさらないから」
結都「六花ー? 六花、どこー?」
六花、ビクッと背筋が跳ね上がる。
屋上の下。中庭で結都がうろうろしながら六花を探している。
陽菜と六花、屋上の鉄柵から結都の様子を見下ろす。
陽菜「六花~、声かけてあげればぁ~?」
六花「絶対に嫌!」
結都「ん? 今、屋上から六花の声が……?」
六花「やばっ、気づかれた!」
空を見上げる結都に、六花は慌ててささっと隠れる。
六花「ごめん陽菜。私逃げるから、柊くんが来たら知らないって伝えて!」※弁当箱を乱雑に包みながら。
陽菜「え? 何で?」
六花「とにかく関わりたくないの!」「いい? 絶対にね。よろしく」※セリフ内の『絶対に』を太字で強調
陽菜「わ、わかった……」
呆然とする陽菜に釘を刺し、バタバタと階段を降りていく六花。
六花・心の声(ヤバいヤバいヤバい……。絶対に柊くんにつかまるわけにはいかない……!)(つかまったらまた面倒くさいことに巻き込まれる!)
無我夢中で廊下を走っていると、ドンッと誰かとぶつかる。
??「痛っ……ってぇな」
六花「あっ、ごめんなさ……」
六花・心の声(拓海……!)
拓海「なんだ。綾瀬か」
六花・心の声(他人行儀な呼び方だな……)(でも、仕方ないか。私とはもう関係ない人だもんね……)
拓海「まあいいや。探す手間が省けてちょうどよかったわ」
六花「えっ?」
拓海「おい、ちょっとこっち来い」
六花の手首をガシッとつかみ、強引に引っ張って歩き出す拓海。
六花・心の声(ちょっと、何なの⁉ 私を連れて、どこに行くつもり……⁉)
ざわざわと騒がしい廊下。そこにいる生徒たちがみんなが振り返って凝視する中、六花と結都が手を繋いで歩いている。
結都は堂々としているが、六花は肩身が狭そうに縮こまっている。
生徒1「あの湊くんが女子と手を繋いでる……」
生徒2「嘘でしょ? あたしたちには塩対応なのに……」
生徒3「もしかしてあの子が彼女なのかな?」
六花・心の声(き、気まずい……。一刻も早く柊くんから離れなきゃ)
六花、結都と繋いでいる手を引き抜こうとする。しかし、まったく動かない。
六花「あの、柊くん。いい加減その手離してくれる? さっきからじろじろ見られて嫌なんだけど」
結都「いいよ。でも、六花の席に着いてからにしよっか」
六花(結局最後まで離さないんかい……)
六花、引きつった笑顔。
※同じクラスという書き文字から六花と結都に向かって二つの矢印が伸びている。
???「あーっ‼」
六花と結都の目の前から大きな叫び声がする。
六花・心の声(最悪……、柊くんの過激派ファンクラブじゃん)
苦虫を嚙み潰したような顔をした六花と、きょとんとした結都の前に現れたのは、結都のファンクラブの女子たち。派手で大人びた容姿のリーダーを中央に、その取り巻きの女子が左右二人ずつ怒った顔で仁王立ちしている。
リーダー「ちょっと! 気安く結都に触らないで‼」
六花「いや、触られてるの私なんだけど……」
殺気だった顔のリーダーに、白けた顔の六花。
取り巻き1「結都くんはみんなのものなんだよ」
取り巻き2「そうだよ! 独り占めするなんて許さない!」
六花「別に独り占めしてないし……ってか、人の話聞いてた?」
結都「ふーん」
六花を自分に抱き寄せる結都。ファンクラブの女子たちに向かって、目に光の宿っていない冷たい笑みを向ける。
六花は嫌がって顔を背けているが、結都の腕に固定されるようにしてつかまっており、逃げることが出来ない状況。
結都「独り占めしてるのは僕のほうだけど」
リーダー「えっ……」
ピリッとした戦慄が走るリーダー。
結都「だって、六花は僕の彼女だし」
六花の耳元に唇を近づける結都。だが、目線はファンクラブの女子たちに向かっており、挑発しているような感じ。
結都と六花を中心に、廊下を上から見たアングル。「えぇ~っ⁉」
モノローグ『うっ、嘘でしょ……』『完全に外堀を埋められてんじゃん、私‼』
青い顔でショックを受ける六花。
〇昼休み 屋上
六花、親友の今井陽菜とお弁当を食べている。
二人はベンチに座っており、ひざの上にお弁当を広げている。
陽菜「六花、今日クラスで聞いたよ! 柊くんと付き合ってるって!」
六花・心の声(もう隣のクラスにも広まってたんだ……)
※『陽菜は隣のクラス』という注釈が入る。
六花「なわけないじゃん……」
陽菜「だよねー。だって、六花には藤原くんって彼氏がいるもんね!」
アハハ、と大きな口を開けた笑顔を浮かべているが、どこかほっとした表情の陽菜。
六花は少しうつむき、表情を硬くする。お弁当箱の中の卵焼きをつまもうとする箸の手を止める。
六花「いや、昨日拓海にフラれちゃって……」
陽菜「はあ⁉ どういうこと⁉」
六花「えっと……」
目を見開く陽菜に、六花が説明する。※ここで時間の経過
陽菜「何それひどい! 六花という彼女がいながら、内緒で女友達とデートしてたの⁉ 最低すぎ!」
六花に対して前のめりになり、拳を握って怒りをあらわにする陽菜。
六花「いいんだよ。もう別れたから」「あっちも私のこと最初から好きじゃなかったって言ってたしね」
諦めたような表情であさっての方向を見る六花。
陽菜「えっ? 六花がバレンタインに告白したとき、即OKしたのに?」
※回想 六花が拓海に「付き合ってください」とチョコが入ったプレゼントボックスを渡している。壁からこっそり陽菜が様子を見て応援しているイラストが描かれる。
陽菜「まあでも、別れて正解だよ!」「『最初から好きじゃなかった』なんて平気で言う男なんて忘れて、柊くんと付き合ったほうが幸せだよ!」
六花「でも、私別に柊くんに恋愛感情なんて持ってないし……。それに、こっちは勝手に執着されて迷惑っていうか……」
陽菜「ちょっと六花!」「このまま柊くんを逃す気? もったいないよ!」
声をひそめて、真剣な顔つきになる陽菜。
陽菜「だって、柊くんってこの学校の理事長の息子なんだよ⁉ それに、成績優秀で将来性も抜群!」「そんな人があんなにベタ惚れしてくれてるんだから、今のうちにつかまえとかなきゃもったいないって!」
六花「そうは言ってもね……」
冷めた顔をして、空っぽのお弁当箱の蓋をする六花。
六花「惚れられてるのをいいことに、あの人を利用する気はさらさらないから」
結都「六花ー? 六花、どこー?」
六花、ビクッと背筋が跳ね上がる。
屋上の下。中庭で結都がうろうろしながら六花を探している。
陽菜と六花、屋上の鉄柵から結都の様子を見下ろす。
陽菜「六花~、声かけてあげればぁ~?」
六花「絶対に嫌!」
結都「ん? 今、屋上から六花の声が……?」
六花「やばっ、気づかれた!」
空を見上げる結都に、六花は慌ててささっと隠れる。
六花「ごめん陽菜。私逃げるから、柊くんが来たら知らないって伝えて!」※弁当箱を乱雑に包みながら。
陽菜「え? 何で?」
六花「とにかく関わりたくないの!」「いい? 絶対にね。よろしく」※セリフ内の『絶対に』を太字で強調
陽菜「わ、わかった……」
呆然とする陽菜に釘を刺し、バタバタと階段を降りていく六花。
六花・心の声(ヤバいヤバいヤバい……。絶対に柊くんにつかまるわけにはいかない……!)(つかまったらまた面倒くさいことに巻き込まれる!)
無我夢中で廊下を走っていると、ドンッと誰かとぶつかる。
??「痛っ……ってぇな」
六花「あっ、ごめんなさ……」
六花・心の声(拓海……!)
拓海「なんだ。綾瀬か」
六花・心の声(他人行儀な呼び方だな……)(でも、仕方ないか。私とはもう関係ない人だもんね……)
拓海「まあいいや。探す手間が省けてちょうどよかったわ」
六花「えっ?」
拓海「おい、ちょっとこっち来い」
六花の手首をガシッとつかみ、強引に引っ張って歩き出す拓海。
六花・心の声(ちょっと、何なの⁉ 私を連れて、どこに行くつもり……⁉)



