〇朝 六花の部屋
自室のベッドで仰向けになってすやすやと眠る綾瀬六花。
六花の頭の上から、柊結都が呼んでいる(ここでの結都は鼻から上は隠れている状態でアップ)。
結都「……か、六花。起きて」
六花・心の声(うーん、何? 誰かが、呼んでる……?)(それにこの匂い、どこかで……)
うっすらと目を開ける六花。
すると、学校の制服を着た結都が、六花におおいかぶさっている。※目覚めた六花の目の前に、結都の顔が異常に近くあるカット。
目を覚ました六花ににっこりと笑顔を浮かべる結都。※口元は微笑んでいるが、目にはハイライトなし。
結都「おはよう、六花。よく眠れた?」
六花、勢いよくベッドから飛びのく。
六花「な、何で柊くんがこの部屋に⁉」※恐怖で顔色が悪く警戒しているが、目は結都を睨んでいる。
結都「何って……愛しい彼女が目覚めないから起こしに来ただけだよ」※きょとんとした顔
六花「彼女⁉ いや、なった覚えないし!」「変なこと言わないでよね! あと、出てって‼」
部屋から結都を追い出し、バタンとドアを閉める六花。
ドアにもたれかかり、混乱で頭を抱える六花。頬に冷や汗が流れている
六花・心の声(今の何? どういうこと⁉)(何で柊くんが私の家にいるの⁉)(ていうか私、柊くんの彼女になった覚えなんてないんだけど……!)
〇六花の家の階段
六花「はぁ……」
制服に着替えた六花が、ぐったりした顔で階段を降りる。
六花・心の声(ああもう、朝から心臓に悪すぎ……)(悪い夢だったらいいのに)
六花、自分の頬をつまんでぐいっと引っ張る。
六花「痛っ! やっぱり夢じゃなかったか……」
ヒリヒリする頬をさすりながらリビングのドアを開ける六花。
〇六花の家のリビング
お洒落なリビング。部屋の奥にカウンターキッチンと、テーブルダイニングがある。
ニコニコ笑顔の六花の両親と一緒にテーブルを囲み、微笑みながら朝ご飯を食べている結都。
その様子を見て立ち止まり、ぎょっとする六花。
六花・心の声(な、何で……私の家族と馴染んでる⁉)
結都「六花、来たんだね」
結都が六花に気づくなり、立ち上がる。六花を自分の隣の席へエスコートしようとするが、六花はスッと結都をかわす。
六花「ちょっと、何でうちのお父さんとお母さんとフレンドリーな感じでご飯を食べてるの⁉」※小声
結都「それはまあ、食べて行ってくださいって言われたし……」
六花「はぁ⁉」
結都「ていうか、将来の義両親との食事を断るだなんてあり得ないしね」
六花・心の声(何この人。気が早いにもほどがあるでしょ)
六花母「結都くんが六花の彼氏だなんて嬉しいわ」
結都「いえ、彼氏として当然ですよ」
ニコニコ笑顔のお母さんに、人当たりのいい笑顔で答える結都。
六花父「彼氏かぁ……。六花もそういう年頃になったんだなあ……!」※嬉しそうだけど目尻に涙が浮かんでいる。
六花「違うって! 柊くんは私の彼氏じゃなくてっ……」
六花母「もーっ、やだ六花ってば。照れなくていいのに」
必死な形相の六花の説明も、お母さんには暖簾に腕押し。
六花父「結都くん、これからも六花のことをよろしく頼むよ」
結都「もちろんです。六花は僕が守ります」
六花・心の声(何で……、どうしてこうなっちゃうの⁉)
〇結都の高級車の中 後部座席
向かい合って座る六花と結都。
六花・心の声(まさか、柊くんちの車で登校することになるなんて……)
落ち着かない六花。ニコニコ顔で六花をじーっと見つめる結都。
結都「かわいいなあ。六花」
六花「あのさ、柊くん」頬に冷や汗が浮かぶが、思い切って口を開く六花。
六花「さっきからずっと気になってたけど、私柊くんの彼女になった覚えなんてないよ」
きょとんとした顔で首をかしげる結都。
結都「覚えてないの? 昨日、六花は僕の彼女になったんだよ」
六花「昨日……?」
〇回想・昨日の放課後 校舎の中の廊下
六花「拓海、これ何?」
廊下で楽しそうに談笑する二人の男女。そのうちの男の方・藤原拓海に六花が険しい顔でスマホの画面を突き付ける。
映し出されているのは拓海と談笑している女子・香月繭のSNSアカウント。
『休日だから話題の恋愛映画を観に行ってきました。すっごくキュンキュンした♡♡♡』という書き込みと共に、ドリンクのカップを持った繭の自撮り写真が大きく表示されている。
しかも、繭の背後には拓海の顔が目から上が見切れた状態で映り込んでいた。
拓海「別に、たまたま繭と一緒に映画を観に行っただけで……」「てか、これくらいのことで何で文句言われなきゃいけねーんだよ」
顔をしかめ、イラついた様子の拓海。
六花「当たり前じゃん」「内緒で香月さんと映画デートしてたんだから!」
拓海「幼なじみと一緒に出かけちゃいけねーのかよ」
繭「そうだよ~。綾瀬さん厳しー」
ムッとする拓海。クスクスとせせら笑う繭。
六花、奥歯をぐっと噛みしめた悔しそうな顔。
六花「最近の拓海、おかしいよ」「香月さんが転校してきてから、私そっちのけでいつも二人でいるよね」「私が、拓海の彼女なのに……」
ふるえる拳を固く握る六花。
拓海「うっざ。俺、束縛してくる女無理」
巧みに冷たい目で睨まれて、スッと無表情になる六花。
真っ黒な背景に、白いプツンという大きな文字。
六花・心の声(ああ、私フラれたんだ……)
六花「わかった。さよなら」
拓海と繭に背を向けて歩き出す六花。その背後で拓海と繭がじゃれ合っている。
繭「拓海ー、いいのー? 綾瀬さんかわいそうだよー?」
拓海「いいんだよ。あいつのことなんて、最初から好きじゃなかったんだから」
六花・心の声(だったら、私が告白したときに断ってくれればよかったのに)(バカみたいじゃん、私……)
六花、後ろを振り返ることなく走りだす。キッとつり上がった目からだんだん涙があふれ、その場にしゃがみ込む六花。
六花「うぅ……、ひっく……」
結都「ねえ」
泣いている六花の頭の上から、結都が上から見下ろすかたちで声をかけてくる。
六花が顔を上げると、心配そうにこちらを見つめる結都と目が合う。
結都「大丈夫?」
六花「柊くん……?」
結都、六花と密着するほど近くにしゃがみ込む。
結都「僕でよければ話聞くけど」
六花の顔をのぞき込む結都。
六花「実はさっき、彼氏にフラれたんだ。最初から好きじゃなかったって言われて……」
結都、目を見開く。次のコマでフッと笑う口元のアップ。
結都「そんな、かわいそうに……」※同情するように眉を八の字にしている
六花「告白したとき、すぐにOKしてくれたのに……」
結都「泣かないで」
六花の涙を人差し指の先でぬぐい取る。
結都「失恋したら、新しい恋を探せばいいんだよ」
六花「え?」
結都「そうだ。僕の彼女にならない?」
六花「急に何? 茶化してんの? それとも、弱っているところにつけ込んで利用する気?」
結都「そんなことないさ。僕は本気だ。ずっときみのことが好きなんだ」「僕なら絶対に裏切らない」
六花「うん……」
〇現在・車の中
結都「思い出した?」
六花「思い出したよ。でも、私があのとき『うん』って言ったのは、ただの相槌のつもりだったんだけど……」
結都「ああ。でも、あの涙を見ちゃったら、六花をほっとくわけにはいかないんだよ。だから、僕が恋人になれば、六花の心も立ち直るんじゃないかと思って」
六花・心の声(何その超理論⁉ ますます理解できない……!)
結都が六花の手を取ろうとする。でも、六花はその手を振り払う。
六花「やめて。私は一人でも大丈夫。だから、今すぐここで降ろして」
車が停まる。ドアに手を書けようとする六花。
結都「ダメだよ。学校に着くまでだ」
結都が手で六花を制する。ガチャッとロック音がする。
にっこりと満面の笑みを浮かべる結都と、青くなる六花。
モノローグ『どうしよう。私、危険な人に本気で好かれちゃってるみたい……』
自室のベッドで仰向けになってすやすやと眠る綾瀬六花。
六花の頭の上から、柊結都が呼んでいる(ここでの結都は鼻から上は隠れている状態でアップ)。
結都「……か、六花。起きて」
六花・心の声(うーん、何? 誰かが、呼んでる……?)(それにこの匂い、どこかで……)
うっすらと目を開ける六花。
すると、学校の制服を着た結都が、六花におおいかぶさっている。※目覚めた六花の目の前に、結都の顔が異常に近くあるカット。
目を覚ました六花ににっこりと笑顔を浮かべる結都。※口元は微笑んでいるが、目にはハイライトなし。
結都「おはよう、六花。よく眠れた?」
六花、勢いよくベッドから飛びのく。
六花「な、何で柊くんがこの部屋に⁉」※恐怖で顔色が悪く警戒しているが、目は結都を睨んでいる。
結都「何って……愛しい彼女が目覚めないから起こしに来ただけだよ」※きょとんとした顔
六花「彼女⁉ いや、なった覚えないし!」「変なこと言わないでよね! あと、出てって‼」
部屋から結都を追い出し、バタンとドアを閉める六花。
ドアにもたれかかり、混乱で頭を抱える六花。頬に冷や汗が流れている
六花・心の声(今の何? どういうこと⁉)(何で柊くんが私の家にいるの⁉)(ていうか私、柊くんの彼女になった覚えなんてないんだけど……!)
〇六花の家の階段
六花「はぁ……」
制服に着替えた六花が、ぐったりした顔で階段を降りる。
六花・心の声(ああもう、朝から心臓に悪すぎ……)(悪い夢だったらいいのに)
六花、自分の頬をつまんでぐいっと引っ張る。
六花「痛っ! やっぱり夢じゃなかったか……」
ヒリヒリする頬をさすりながらリビングのドアを開ける六花。
〇六花の家のリビング
お洒落なリビング。部屋の奥にカウンターキッチンと、テーブルダイニングがある。
ニコニコ笑顔の六花の両親と一緒にテーブルを囲み、微笑みながら朝ご飯を食べている結都。
その様子を見て立ち止まり、ぎょっとする六花。
六花・心の声(な、何で……私の家族と馴染んでる⁉)
結都「六花、来たんだね」
結都が六花に気づくなり、立ち上がる。六花を自分の隣の席へエスコートしようとするが、六花はスッと結都をかわす。
六花「ちょっと、何でうちのお父さんとお母さんとフレンドリーな感じでご飯を食べてるの⁉」※小声
結都「それはまあ、食べて行ってくださいって言われたし……」
六花「はぁ⁉」
結都「ていうか、将来の義両親との食事を断るだなんてあり得ないしね」
六花・心の声(何この人。気が早いにもほどがあるでしょ)
六花母「結都くんが六花の彼氏だなんて嬉しいわ」
結都「いえ、彼氏として当然ですよ」
ニコニコ笑顔のお母さんに、人当たりのいい笑顔で答える結都。
六花父「彼氏かぁ……。六花もそういう年頃になったんだなあ……!」※嬉しそうだけど目尻に涙が浮かんでいる。
六花「違うって! 柊くんは私の彼氏じゃなくてっ……」
六花母「もーっ、やだ六花ってば。照れなくていいのに」
必死な形相の六花の説明も、お母さんには暖簾に腕押し。
六花父「結都くん、これからも六花のことをよろしく頼むよ」
結都「もちろんです。六花は僕が守ります」
六花・心の声(何で……、どうしてこうなっちゃうの⁉)
〇結都の高級車の中 後部座席
向かい合って座る六花と結都。
六花・心の声(まさか、柊くんちの車で登校することになるなんて……)
落ち着かない六花。ニコニコ顔で六花をじーっと見つめる結都。
結都「かわいいなあ。六花」
六花「あのさ、柊くん」頬に冷や汗が浮かぶが、思い切って口を開く六花。
六花「さっきからずっと気になってたけど、私柊くんの彼女になった覚えなんてないよ」
きょとんとした顔で首をかしげる結都。
結都「覚えてないの? 昨日、六花は僕の彼女になったんだよ」
六花「昨日……?」
〇回想・昨日の放課後 校舎の中の廊下
六花「拓海、これ何?」
廊下で楽しそうに談笑する二人の男女。そのうちの男の方・藤原拓海に六花が険しい顔でスマホの画面を突き付ける。
映し出されているのは拓海と談笑している女子・香月繭のSNSアカウント。
『休日だから話題の恋愛映画を観に行ってきました。すっごくキュンキュンした♡♡♡』という書き込みと共に、ドリンクのカップを持った繭の自撮り写真が大きく表示されている。
しかも、繭の背後には拓海の顔が目から上が見切れた状態で映り込んでいた。
拓海「別に、たまたま繭と一緒に映画を観に行っただけで……」「てか、これくらいのことで何で文句言われなきゃいけねーんだよ」
顔をしかめ、イラついた様子の拓海。
六花「当たり前じゃん」「内緒で香月さんと映画デートしてたんだから!」
拓海「幼なじみと一緒に出かけちゃいけねーのかよ」
繭「そうだよ~。綾瀬さん厳しー」
ムッとする拓海。クスクスとせせら笑う繭。
六花、奥歯をぐっと噛みしめた悔しそうな顔。
六花「最近の拓海、おかしいよ」「香月さんが転校してきてから、私そっちのけでいつも二人でいるよね」「私が、拓海の彼女なのに……」
ふるえる拳を固く握る六花。
拓海「うっざ。俺、束縛してくる女無理」
巧みに冷たい目で睨まれて、スッと無表情になる六花。
真っ黒な背景に、白いプツンという大きな文字。
六花・心の声(ああ、私フラれたんだ……)
六花「わかった。さよなら」
拓海と繭に背を向けて歩き出す六花。その背後で拓海と繭がじゃれ合っている。
繭「拓海ー、いいのー? 綾瀬さんかわいそうだよー?」
拓海「いいんだよ。あいつのことなんて、最初から好きじゃなかったんだから」
六花・心の声(だったら、私が告白したときに断ってくれればよかったのに)(バカみたいじゃん、私……)
六花、後ろを振り返ることなく走りだす。キッとつり上がった目からだんだん涙があふれ、その場にしゃがみ込む六花。
六花「うぅ……、ひっく……」
結都「ねえ」
泣いている六花の頭の上から、結都が上から見下ろすかたちで声をかけてくる。
六花が顔を上げると、心配そうにこちらを見つめる結都と目が合う。
結都「大丈夫?」
六花「柊くん……?」
結都、六花と密着するほど近くにしゃがみ込む。
結都「僕でよければ話聞くけど」
六花の顔をのぞき込む結都。
六花「実はさっき、彼氏にフラれたんだ。最初から好きじゃなかったって言われて……」
結都、目を見開く。次のコマでフッと笑う口元のアップ。
結都「そんな、かわいそうに……」※同情するように眉を八の字にしている
六花「告白したとき、すぐにOKしてくれたのに……」
結都「泣かないで」
六花の涙を人差し指の先でぬぐい取る。
結都「失恋したら、新しい恋を探せばいいんだよ」
六花「え?」
結都「そうだ。僕の彼女にならない?」
六花「急に何? 茶化してんの? それとも、弱っているところにつけ込んで利用する気?」
結都「そんなことないさ。僕は本気だ。ずっときみのことが好きなんだ」「僕なら絶対に裏切らない」
六花「うん……」
〇現在・車の中
結都「思い出した?」
六花「思い出したよ。でも、私があのとき『うん』って言ったのは、ただの相槌のつもりだったんだけど……」
結都「ああ。でも、あの涙を見ちゃったら、六花をほっとくわけにはいかないんだよ。だから、僕が恋人になれば、六花の心も立ち直るんじゃないかと思って」
六花・心の声(何その超理論⁉ ますます理解できない……!)
結都が六花の手を取ろうとする。でも、六花はその手を振り払う。
六花「やめて。私は一人でも大丈夫。だから、今すぐここで降ろして」
車が停まる。ドアに手を書けようとする六花。
結都「ダメだよ。学校に着くまでだ」
結都が手で六花を制する。ガチャッとロック音がする。
にっこりと満面の笑みを浮かべる結都と、青くなる六花。
モノローグ『どうしよう。私、危険な人に本気で好かれちゃってるみたい……』



