契約結婚した公爵閣下は、別邸に何かを隠している

 式はつつがなく終わり、私は彼の屋敷に居を移した。暮らし始めてまだ日は浅いが、女主人としてとても丁重に扱われている。使用人は皆礼儀正しく、私が辺境から連れてきた侍女も、奥様が信頼を寄せる者と重んじられている様子だ。

 アラン様との関係は『まずは互いを知ろう』という彼の提案により、交流を深める段階から始まった。何度か庭園を歩き、互いに口数は多くないものの、穏やかに会話を交わした。

 彼からは毎日のように贈り物が届けられる。花や装飾品、優美なドレスが驚くほどに。ドレスに付けられたレースなど、どこの工房のものかと感嘆するほどに美しい。このような品、一朝一夕で用意できるものではない。きっと、前もって準備をして下さっていたのだろう。

 毎夜、夕食も共に摂る。お忙しいだろうに、新婚だからと時間を合わせて下さって。そして夕食の後は『また明日』と、別々の私室に戻るのだ。

 何の不自由もない、重用される日々。しかし私は気づいている。アラン様は私が私室に入った後、ひっそりと屋敷を後にし、敷地内に建つ別邸に向かわれるのだ。

 アラン様は別邸に何かを隠していらっしゃる。そして私はそれを——愛人ではないか、と踏んでいる。