ニュースは、当時の被害者の遺族へのインタビューへと続いた。
『⋯⋯亡くなった子供たちの中に、私の娘もいたはずでした。一命は取り留めたものの、彼女はあの日、すべての記憶と⋯⋯』
画面の下に、被害者の名前がテロップで流れる。その一番端にあった名前に、僕の呼吸が止まった。
『被害者:小野 蒼さん(当時6歳)』
「⋯⋯え?」
聞き間違いじゃない。
見間違いでもない。
そこにははっきりと、僕が愛した彼女と同じ名前が刻まれていた。
「小野⋯⋯蒼⋯⋯? 同名? いや、でも、そんな偶然⋯⋯」
頭の中で、激しい耳鳴りが始まった。
視界が急激に歪み、病室の壁が迫ってくるような錯覚に陥る。
『佑介くん、私のこと、見つけてくれてありがとう』
耳元で蒼の声がしたような気がして、僕は周囲を見渡した。でも、そこには誰もいない。
「八年前の春、ひき逃げ⋯⋯。僕が見た、あの桜の夢は⋯⋯」
震える手でスマートフォンを取り出し、事件の概要を必死に検索する。
記事を読み進めるほどに、血の気が引いていくのが分かった。
現場は、僕が昔住んでいた家のすぐ近くだった。
「嘘だ⋯⋯嘘だろ。どういうことだよ⋯⋯」
ニュースのキャスターが淡々と「あれから八年」と告げる声が、今の僕には死刑宣告のように聞こえた。
僕はナースコールに手を伸ばしかけて、止めた。
大人たちに聞いても、きっとまた隠される。
僕はベッドから這い出し、点滴スタンドを握りしめた。
足はまだ覚束ないけれど、心はかつてないほど激しく燃えていた。
