夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



春の柔らかな日差しが差し込み始めた頃。


加湿器の静かな蒸気音だけが響いていた。
僕はベッドの上で、のほほんとテレビのニュース番組を眺めていた。

退院が決まってからの僕は、まるで毒気が抜けたみたいに穏やかで、ただ普通という名の時間にいた。


番組では、ある特集が組まれていた。


『次のニュースです。今から八年前、登校中の児童ら五人が犠牲となった悲惨なひき逃げ事件。本日、現場では追悼の式典が行われました』


ひき逃げ、五人死亡、八年前。
その単語を聞いた瞬間、何故か心臓がドクンと嫌な跳ね方をした。

手に持っていたリモコンが、指先から滑り落ちそうになる。


「八年前⋯⋯?」


その時期は、僕が小学校に上がるはずだった春と重なる。
妙な胸騒ぎがして、僕は画面に釘付けになった。

ニュース映像には、桜が咲き誇る並木道と、そこに手向けられたたくさんの花束が映し出されていた。
その風景に見覚えがあるような気がして、僕は自分の胸を強く押さえた。


痛い。
物理的な痛みじゃない、魂が何かを思い出そうとして軋むような、そんな感覚。