サイドテーブルに置かれたままの、あの赤いパッケージが目に入った。
「あ⋯⋯。蒼、ショコラスティック。一袋、まだ食べてなかったね」
僕は震える手で袋から一本ずつ取り出した。
けれど、それを持とうとした蒼の指先は、もうプラスチックの袋さえ掴めなくなっていた。
「⋯⋯ごめんね、佑介くん。もう、食べられそうにないや」
彼女は悲しげに微笑んだ。
僕はその一本を自分の口に含み、半分に折ってから、彼女の唇にそっと近づけた。
もちろん、彼女がそれを咀嚼することはできない。
でも、その仕草だけでも、僕たちが半分こしたという事実を残したかった。
「すごく甘いよ」
「⋯⋯うん、甘いね。⋯⋯佑介くんと一緒に食べたこと、絶対に忘れないから」
彼女の脳裏に、あのクリスマスの夜道が浮かんでいるのが分かった。
あの時、僕たちは確かに世界を味方にしていた。
病気も、孤独も、すべてを忘れさせてくれるほどの熱量がそこにはあった。
その熱が、今、雪解け水のように冷えていく。
僕は彼女の冷たくなった額を、自分の額で温めるようにして、そのままじっとしていた。
この時間が、永遠に止まってしまえばいい。
神様なんて信じていないけれど、もしいるのなら、僕の命をすべて差し出すから、この夜を明かさないでほしいと、心の中で絶叫していた。
