夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



僕たちは、それからも、暗闇の中でとりとめもない話をした。
学校のこと、これからの季節のこと。まるで明日も当たり前に一緒にいられるかのように、慎重に言葉を選びながら。


「ねえ、佑介くん。もし、私が普通の女の子だったら、どんな大人になってたかな」


蒼が僕の胸元に顔を埋めて聞いた。


「⋯⋯そうだね。きっと、素敵な看護師さんとかになってたんじゃないかな。蒼は優しいから、僕みたいな困った患者を放っておけないだろ?」


「あはは、そうかもね。それで、佑介くんが退院する時に、おめでとうって言って見送るの。⋯⋯それが、私の本当の夢だったのかも」


叶うはずのない未来。
僕たちはその、どこにも存在しないいつかの話を、まるで当たり前のように語り合った。


蒼は僕の手を握り直し、一文字ずつ丁寧に言葉を紡いだ。


「佑介くん。私がいなくなっても、あの青い手帳、捨てないでね。そこには、私が佑介くんと一緒にいたっていうことが、全部詰まっているから」


「捨てないよ。一生、僕のそばに置いておく」


「ありがとう。⋯⋯それだけで、私は救われるよ」


彼女の声が、一段と低くなっていく。意識の混濁か、あるいは存在の限界か。
彼女の瞳に宿っていた光が、少しずつ、夜の暗闇に飲み込まれていくのを、僕はただ見守るしかなかった。