夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



蒼は首を激しく横に振り、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。


「ダメ⋯⋯絶対にダメ。佑介くんには、生きてほしいの。私の分まで、美味しいものを食べて、誰かと笑って、大人になって⋯⋯。それが、私の最後のお願いなの」


「そんなの、呪いと同じだよ⋯⋯」


僕は泣き崩れた。どれだけ抗っても、運命の歯車は止まらない。
僕が彼女を愛すれば愛するほど彼女を殺し、彼女が僕を愛すれば愛するほど僕を突き放す。


窓の外では、皮肉なほどに美しい星空が広がっていた。
終わりが、刻一刻と近づいているのを感じる。


僕は、彼女の決意をこれ以上否定する力を失っていた。


彼女の孤独、彼女の恐怖。
そのすべてがあまりに重すぎて、僕の細い腕では支えきれなくなっていた。


「何が何でも、私は今夜で消えるよ」


「⋯⋯嫌だ」


「私だって嫌だ。⋯⋯でもね?これが私の願いなの」


「そんなの嫌だ!」


子どものように啖呵を切って叫ぶ。
喉がちぎれそうになって、咳をする。


「祐介くんにはいつも通りの日常が戻ってくるよ。お友達だって、お父さんだって」


嫌だという我儘がもう通用しないことを、知っていた。
見ないふりだってもうできないことも。


蒼の腕に縋るように抱きつくこともできず、ただ呆然としている。


なんて非力なんだろう。


「ありがとう、佑介くん。⋯⋯世界で一番、愛してる」


蒼は、透き通った笑顔で言った。
その笑顔は、もうこの世のものではない美しさを放っていた。


僕たちは、言葉にならない悲しみを分かち合うように、ただ見つめ合った。
この夜が、静かに、けれど確実に、僕たちを飲み込もうとしていた。