夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



蒼が立ち上がり、ナースコールを押そうとした。
けれど、彼女の指先は無機質なボタンの表面を虚しくすり抜け、空を切った。


「あ⋯⋯」


蒼が絶望に満ちた顔で自分の手を見つめる。
彼女はもう、この世界の何にも干渉できない。

僕という受信機が壊れかけているせいで、彼女という電波は、行き場を失って虚空を漂っている。


僕が彼女を愛すれば愛するほど、彼女をこの世界に繋ぎ止めようと脳を酷使すればするほど、僕の命は削られ、その結果として彼女の形が壊れていく。


なんて、皮肉な矛盾だろう。


僕は溢れ出す涙を拭うこともできず、ただ薄くなっていく彼女の姿を焼き付けるように見つめた。