夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



意識は、深い、深い海の底に沈んでいた。

光も音も届かない、ただ重苦しい静寂だけが支配する場所。
そこには痛みも苦しみもない代わりに、自分という形さえ曖昧になっていくような感覚があった。


⋯⋯帰らなきゃ。


泥のような眠りの中で、その一念だけが僕を繋ぎ止めていた。
何を、どこに、誰のもとに戻るのか。

霧がかった記憶の断片を必死に手繰り寄せると、指先にほんのわずかな温もりが触れた。


僕を離さない、桜の香り。
そして、唇に残ったあの日の熱。


蒼⋯⋯。


名前を呼んだ瞬間、暗闇に亀裂が走った。

無理やり肺に空気を流し込まれたような衝撃と共に、全身を激しい痛みが駆け巡る。


重い、重い瞼を押し上げる。


視界は白く濁り、焦点が合わない。


耳元では、絶え間なく鳴り響く電子音と、遠くで誰かが叫んでいるような声が聞こえる。
けれど、僕が探しているのは、そんな「現実の音」じゃなかった。