午後一番の授業。
五時間目の世界史は、窓から差し込む暖かな陽気も手伝って、教室全体が微睡んだような空気に包まれていた。
黒板を叩くチョークの乾いた音と、先生の抑揚のない声が、僕の意識をゆっくりと、けれど確実に現実から遠ざけていく。
⋯⋯やばい、意識が飛ぶ。
ペンを握る指先に力を込めてみるが、まるで自分の体ではないような感覚だ。
今朝感じた泥のような倦怠感が、再び全身を支配し始めていた。
教科書の文字が歪み、重なり合い、やがて意味をなさない記号へと変わっていく。
「おい、佑介。大丈夫か」
隣の席から、島の低く落ち着いた声が聞こえた。
チラリと視線を向けると、彼は眼鏡を指先で直しながら、心配そうに僕を伺っている。
「⋯⋯ちょっと、眠気がひどいだけだ」
「それ、ちょっとの顔じゃないよ。お前、さっきから呼吸が止まりかけてたぞ」
島の鋭い指摘に、僕は曖昧な苦笑いを返すことしかできなかった。
「おい佑介、また寝てんのかよ。お前、最近マジで寝すぎだぞ」
呆れ顔で後ろを振り返り、机を叩いた幸一。
「なんか最近、体が重くて」
「部活もしてないのに、お前は疲れすぎなんだよ。な、島?」
「佑介、顔色もあまり良くないよ。ちゃんと寝てるのか?」
「寝てるよ⋯⋯多分、誰よりもな」
今の僕には友達の気遣いに応えるだけの気力が残っていなかった。
