夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



「イルミネーションの点灯まで、まだ五十分以上あるね」


広場に設置された大きな時計を見上げて、蒼が少し申し訳なさそうに言った。


「あはは、ちょっと急ぎすぎちゃったかな。楽しみにしてたのが、バレバレだ」


病院を抜け出した開放感から、足取りが早くなっていたのかもしれない。


「ううん、私も楽しみだったから嬉しいよ。ねえ、あそこの百貨店、入ってみない?あそこなら点灯まで暖まれるし」


蒼が指差したのは、駅前にそびえ立つ老舗の百貨店だった。
入り口には豪華なリースが飾られ、自動ドアが開くたびに暖房の効いた心地よい空気と、香水の華やかな香りが溢れ出してくる。


「そうだね。少し冷えてきたし、ちょうどいいかも」


僕たちはポケットの中で手を繋いだまま、吸い込まれるように百貨店の中へと足を踏み入れた。