夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



ダイナーズを出て駅前広場へ向かうと、日が傾き始めた風は一段と鋭さを増していた。


「⋯⋯ふぅ」


隣を歩く蒼が、小さく丸まって自分の手を擦り合わせている。
白い息が彼女の鼻先を掠め、耳たぶと鼻の先がほんのりと赤くなっていた。


「蒼、寒い?」


僕がそう問いかけるより早く、不意に右手の自由が奪われた。


蒼が僕の右手をぎゅっと握りしめ、そのまま僕が着ているチェスターコートの大きなポケットの中に、繋いだ手を滑り込ませたのだ。


「こうしてれば、あったかいよ。⋯⋯ダメかな?」


ポケットの中で、彼女の細い指先が僕の掌を弄るように動く。
上着の布一枚を隔てて、彼女の体温がダイレクトに伝わってきた。


「⋯⋯ダメじゃないけど。びっくりするだろ」


顔が熱くなるのを隠すように、僕はコートの襟を立てた。
ポケットの中という小さな密室で、僕たちの体温が混ざり合う。

それはどんな言葉よりも、僕たちが「今、ここに一緒にいる」ということを強く実感させてくれた。