人混みを縫うようにして歩き、僕たちが辿り着いたのは、街の角にあるお馴染みの看板、ダイナーズだった。
クリスマス限定の華やかな装飾が施されているけれど、漂ってくるのはいつも通りの食欲をそそる香ばしい肉の匂いだ。
「ここ、ずっと来たかったんだ。幸一たちとよく放課後に行ってた場所なんだけど、僕は入院しちゃってから一度も行けてなくて」
「ハンバーガー!」
店内は家族連れや中高生で賑わっていたけれど、運良く窓際の端の席が空いていた。
僕は迷わず、ずっと食べたかったダブルチーズバーガーのセットを注文する。
蒼は、僕が勧めた一番人気のテリヤキバーガーを選んだので、一緒に注文した。
運ばれてきたダブルチーズバーガーは、期待通りの重量感だった。
溢れ出す肉汁と、とろりと溶けた黄金色のチーズ。
一口頬張ると、ガツンとした肉の旨味が口いっぱいに広がる。
「⋯⋯美味い。やっぱりこれだよ」
僕が感動していると、蒼は小さな口を一生懸命に開けて、テリヤキバーガーにかじりついた。
「んん⋯⋯!本当だ、美味しい!!」
頬に少しだけソースをつけたまま、蒼は花が咲いたような笑顔を見せた。
その姿があまりに愛らしくて、僕は自然と顔が綻ぶ。僕は自分のポテトを彼女の方へ差し出した。
「ほら、ポテトも。セットにしかついてないから」
ポテトの袋を蒼の方に向けて食べさせる。
賑やかな店内の喧騒の中で僕に気づく人はいるのだろうか。
「佑介くん、クリスマスって、誰かと美味しいものを食べるだけでこんなに幸せになれるんだね」
彼女の言葉に、僕は胸が熱くなるのを感じた。
蒼が感じている「美味しい」という喜びも、僕が感じている「幸せ」という体温も、本物だ。
僕は彼女の笑顔を、一生消えない記憶として心の奥底に刻み込んだ。
