夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



カレンダーが十一月の半ばを過ぎた頃、個室に差し込む光は鋭さを増し、窓の外の木々はすっかり枯れ色に沈んでいた。


「⋯⋯あ、蒼。その服」


ふと視線を上げると、パイプ椅子に座る蒼の姿がいつもと違っていた。
秋口まで着ていた薄手のブラウスではなく、柔らかなアイボリーのタートルネックに、厚手のニットカーディガンを羽織っている。


「似合ってるかな?ちょっと、季節に合わせてみたんだけど」


蒼は少し照れくさそうに、カーディガンの長い袖を揺らしてみせた。
その姿は、どこからどう見ても、外の寒さを知っている生身の女の子そのものだった。


「うん、すごく似合ってる。⋯⋯家で着替えてきたの?」


僕は当たり前のように尋ねた。
彼女がどこから来て、どこへ帰るのか。それを深く考えることは、僕の脳が本能的に拒絶していた。


「⋯⋯うん。ちょっとだけ、冬の準備をしてきたの」


蒼は一瞬だけ、泣きそうなほど綺麗な笑顔を浮かべて、短くそう答えた。


今の僕には彼女の言葉だけが世界の真実だった。