蒼の腕の中に閉じ込められたまま、僕は自分の心臓が、耳元で鐘を鳴らしているかのような激しさで脈打つのを感じていた。
彼女が僕の背中を叩く規則正しいリズムによって、少しずつ、確実に楽になっていた。
「⋯⋯落ち着いた?」
顔を覗き込んできた蒼の瞳には、僕の弱さをすべて包み込むような深い慈愛が湛えられていた。
僕は小さく頷き、彼女の細い肩に額を預ける。
蒼が女性だからだろうか。
母親というか、落ち着く場所だった。
「蒼。君を抱きしめてると、なんだか変な感じがするんだ」
僕の呟きに、蒼の手が一瞬だけ止まった。
彼女は僕の顔をじっと見つめ、何かを言いかけて――けれど、それを飲み込むようにして優しく微笑んだ。
「それはきっと、私が佑介くんの『おまじない』だからだよ。佑介くんが一番求めている温もりを、私が再現してあげてるの。いいんだよ?もっと甘えても」
彼女は悪戯そうに微笑む。
ただ、この腕の中にいたい。
外の世界で誰かに忘れ去られる恐怖よりも、ここで彼女に抱かれている、この嘘のような幸せだけを信じていたかった。
